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偶然と過去 05
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芦川さんは人目も憚らず、俺の手に自分の手を重ねてきた。
こんなときでも触れられると嬉しいなんて単純な脳みそだ。
「……うん。好きだった」
嘘を吐かない芦川さんは、誠実だと思う。
だからそのぶん、自分の小ささを感じるんだ。
バカみてぇ。俺だって、橘のこと好きだったのに。
芦川さんにも好きな奴がいたっていいじゃん。
今付き合ってるのは俺じゃん。
…って、わかっているのに。受け入れたくない。
モヤモヤしてイライラして自己嫌悪。
「和真くん。オレ、和真くんのそういうとこが好きだよ」
「何、言って……」
「まっすぐで、素直で、誤魔化さないで気持ちぶつけてきてくれるとこ、すごく好き」
内緒話レベルに潜めた声なのに、ストレートなことをさらりと言う。
あんたの方がよっぽど気持ちぶつけてくるよ…。
芦川さんの手にぎゅっと力がこもった。
「今度はオレの話も聞いてくれる?色々」
「え……」
「ん…オレね、自分のこと黙ってて和真くんがしんどそうにしてるの……キツい」
……同じだ。
俺が橘のことを話そうって思ったときと、同じ。
安心させたくて、好きだってわかってほしくて、信頼してほしくて。
芦川さんも……今そうなのかな――。
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