アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
偶然と過去 09
-
「一輝ね、結婚してんの」
「はぁ…、ん?え!?」
「あいつが短大出てすぐ…だったかなぁ……で、子供もいんのー……」
「……へぇ」
アイツ意外にしっかりしてんだな…。
突然、首に腕を回され抱き付かれた。
芦川さんは汗をかいてて、それが更に良い匂いを増幅させててくらっくらクる。
「……好き、だったんだ……」
あぁ。
こんななってても、その話するって覚えてたのか。
ほんと……良い人。
ずっ…と芦川さんが鼻をすする音。それは風邪のせいじゃないなんて分かってた。
背中にそっと腕を回した。
「ごめん。ごめんね……」
「何がですか」
「似てたんだ」
ズキッと心に走った痛み。
やっぱそーだよなー…。
予想通りでちょっと他人事みたいにすら思える。
今、顔が見えなくて良かった。
明らかにヘコんだ顔しちまったからそれ見られたら芦川さんがもっと泣いちゃうだろうな。
「和真くんが、髪が。一緒で……」
「ん…」
「話し方、とか…。オレ多分、最初は……っ」
「……うるさいです」
強めに吐いた言葉に、ビクッと芦川さんの声も動きも止まる。
「芦川さんさー、俺のこと好きでしょ?」
「…うん」
「なら、いっすよ」
やっぱり俺って単純なんだ。
――また、嫉妬していた。
「俺バカだからさぁ、あんまいっぱい考えられないみたいです。だから、芦川さんが今俺好きならいいかなって思う」
「かず、ま……く……ッ、うぇっ……」
今まで誰にも言ってないだろう気持ちを教えてくれて嬉しい。
俺意外に向けられてる好意は過去のことってわかっててもムカつく。
色んな感情がぐるぐる回って……最終的には放り投げた。
今の芦川さんには俺しかいない。
とか、ちょっとヤバい考え方だろーか。
「かずまく……好き……好き……」
芦川さんの「好き」だけで、全部どうだってよくなる。
「頑張りましたね」
「うっ…ん…、あり、がと……」
だから、いつかの芦川さんの真似をした。
頭をぽんぽんと叩いて優しく抱き締めた。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
98 / 360