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七夕 2015-2
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麗の書いた短冊を丁寧に軒先の笹の木に飾り付けてから数日後、いつも通り同じベッドで眠っていた獅琉と麗。
朝になり、獅琉の意識が覚醒する。
腕の中に何時も在る体温が無いことに気付いた獅琉は目を閉じたまま腕を伸ばした。
麗は常に獅琉の手の届く場所にいる。
しかしその日、その手は麗の華奢な体に触れられなかった。
あれ...?麗?
ベッドに麗がいないことに気が付いた獅琉は飛び起きた。
「麗...っ」
上半身を起こして辺りを見回しても愛しいその姿は見えない。
獅琉は心臓が凍り付く様な寒気に襲われた。
「れ、い...?」
麗がいない。
獅琉の頭によぎるのは以前麗が誘拐されたあの事件。
麗を見つけたあの部屋。
蒼白な顔でぐったりと横になっている麗。
肩口に刻まれた深い傷。そこから滲む真っ赤な血液。
また、麗が────
震えそうになる体をなんとか動かし、ベッドから下りて麗を探す。
「麗...、麗!!」
ソファの上にもその後ろにも、麗のお気に入りのラグの上にもやはりその姿は無い。
「嘘だろ...」
俺が、寝てる間に連れて行かれたのか...?
でも俺が気付かないなんて...
暫く広い部屋で呆然としていた獅琉。
しかしふと顔を上げて口元をきゅっと結んだ。
こんなことしてる場合じゃねぇ。
早く見つけてやらないと。
きっとあの泣き虫は泣いてる筈だから。
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