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東吾くんは犬
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「東吾くん来るのおっそーい」
はぁ、と大袈裟に溜息をついたそいつは持っていたリモコンを投げ捨てた。
長い睫毛に縁どられた目は不満げに俺を見ている。小さな桃色の唇からは先程から文句ばかりだ。
甘やかされて育ったガキが……
舌打ちしそうになるのをなんとか抑えて笑顔を作る。
「わりい、これでも急いで来たんだぜ」
そうわざわざタクシー使ったんだ。
「えー、知らないよそんなこと。過程なんてどうでもいいよ。東吾くんも最初にあった時言ってたじゃん大事なのは結果だって」
あーあと髪の毛を弄りながら床に座った俺を見下ろしてくる。
どうしてこうなったんだ。心の底から二ヶ月前に戻りたい。
「そんなに怒らないでくれよ唯斗」
「今は唯斗じゃないでしょ、ほんっとうに使えないなぁ……」
大げさにため息をついて俺の前にいつものようにそれを投げた。ガシャンと金属音。
心にずしりと重しがのっかる。
「早くつけなよ、東吾くん」
冷たく言い放たれて溜息をひとつついてそれを手にとった。もう何度も繰り返して慣れてしまった。
そんな自分に嫌気がさす。それもこれも目の前のコイツのせいだ。
「ああ、可愛い!! やっぱり東吾くんには赤が似合うねぇ」
光悦とした表情を浮かべて俺を見下ろしてくる。
けれど一瞬でその表情を変える。冷たい目。俺を見下して、蔑んでいる目だ。
「でも、恥ずかしいね? 僕も恥ずかしいや。こんな人が僕の家庭教師の先生だなんて。医学部の大学生に見えないや、『首輪』なんてつけちゃってさ。
あ、でも今東吾くんは僕の『犬』だもんね。
中学生のガキの言うこと聞いて首輪つけて恥ずかしいね」
クスクス笑って俺を見ている。
そう、俺はコイツの『犬』だ。
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