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拒絶
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ハルは自分の事を忘れる程陽の雰囲気が急に変わったことに驚き陽の名前を呼ぶ
「…陽ちゃん?」
「………俺を好きなる人は…皆、皆、居なくなるから…」
「…………え?」
思わず聞き返してしまったが何となく陽の言っている事柄に思い当たる節がある
「…ハルも……知ってるだろ…俺を好きになったら…それで俺もその人が好きだったら………皆…嫌な思いする」
「……陽ちゃん」
昔、陽ちゃんの大切な人が事故で亡くなったことがあった。
その時も確か陽ちゃんは同じ事を言って真っ黒く、光のない目をして、全く笑わなくなって凄く心配した…今の陽ちゃんはその時にそっくりだとハルは思った
「………だから…ハルまで…俺の事好きにならないで………」
「そんっ…なの、無理だよ……」
「なんで…っ」
「好きになるの諦めようとして今迄何度も何度も……でも、無理だった…それに、好きになるのやめようって思って辞められるほど陽ちゃんのこと好きって気持ちは軽いものじゃなかった…」
「………ハル…でも、ごめん、俺はハルの事は好きになれないしその気持ちは…応えられない」
「……それは…俺を見ていってるの…?それとも…過去の……陽ちゃんが受けた傷を見てそう言ってるの…?」
「………とにかく…俺はお前と友達以上にはなれないから…」
「…答える気はないんだね」
「……」
「…そう、わかった。………でも一つ聞いていい?」
「…なに?」
「………俺の事…嫌いになった…?」
「そんなことないっ…!!」
そう強く答える陽は珍しく泣きそうな顔をしていた。
言いたくても言えなくて、伝えたくても伝えられない
後いつも数センチの距離は近づいては何かに反発しあい遠く離れていく
不確かな二人のあいだにある何かはいつもいつも目の前でユラユラとシルエットだけを残し
あとは何もかもを掻き回し消えていっていた
そうしていつもお互い伝えたい気持ちは
コトバにすること無く二度と口にされることもなく飲み込んだ想いは心を傷つける
それは昔も今も変わらず、
ハルも陽もお互いに一番伝えたい言葉を飲み込み何もない振りをし続けていく
「………よかったーーー!俺、てっきり気持ち悪がられると思ってたよ〜」
そう言っていきなり明るく高らかな声で話し出すハルに陽は心がまた痛みはじめたが、それでも何も上手く掛けれる言葉が見つからない
「そんなこと、あるわけないだろ」
「…ふふっ、さ〜すがだね陽ちゃんは」
「…ハル」
名前を呼ぶが何も言い出せなく止まってしまう
「ん〜?なあに、陽ちゃん!……俺達もそろそろ降りよ?皆そろそろ帰ってくるよ」
「…………なんでもない……ああ、そうだな…降りよ」
先に歩き出すハルの表情は陽には見えない
ハルは静かに、そして、痛々しく綺麗な瞳から悲しみを含ませた涙をつたわせていた
――陽ちゃん…ごめんね…
二人のそれぞれの気持ちはお互いの無言の中にかき消されて行った
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