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ムスコサイド12(主)
「さて、関根さんがどうしたんだ?
ケンタ全部話せ。 聞くからな。」
「うん。 オヤジ、ありがと。 うぅ…」
「ケンタ。 泣きたい時は我慢せずに泣け。
そして落ち着いたら話せ。 時間はたっぷりあるからな。」
「うん。 今日の肉食歩会で、
関根さんと関根さんの一番親しい山本さんが話してたんだ。」
「関根さんと山本さんね。」
「うん。 関根さんに彼女がいる事を知った。」
「そっか… 付き合っている彼女がいたのか…」
「うん。 その彼女と結婚を考えていて、
もうすぐプロポーズするみたいなんだ。」
「そっか… 結婚か… ショックだよなぁ~…」
「それでね、その彼女がBL好きなんだって。」
「ビーエルて… なんだ?」
「ボーイズラブって言う意味で… ゲイやホモの事…」
「あぁね。男の子の恋ってことかぁ~。それが好きな彼女って?」
「マンガとか小説が好きで… 趣味みたいだよ。」
「なるほど、俺達がレズビデオを観るような感覚かぁ~。」
「うん。 そうなんだけど… うぅ…」
「ケンタ…」
「オヤジィ~… それでねっ… それでねっ…」
「うん。 慌てるな… 泣きながら喋ると苦しいだろう。」
「うん。 うぅ… ちょっと待ってね… ズル… 」
「気にするな、俺はチーズを食うから。
ケンタ、ちょっとチーズを持ってろ。 ほいっ。」
お互いに片方の手を繋いでいるから、
三角チーズの包み紙が片手では上手く剥けない。
だから、三角チーズを俺に持たせて、
オヤジが包み紙を剥いていた。
なんか… これって… うれしいかも…
「サンキュウ。 ケンタも食うか? ほらっ口開けろっ。」
三角チーズを俺に口に持ってきて食わせてくれた。
残り半分をオヤジは自分の口に掘り込んだ。
繋いだ手を離さないでいてくれる事。
俺の話を聞いてくれる事。
二人で仲良くチーズの包み紙を剥いた事。
全部が嬉しい。 恋人同士のような錯覚。
何よりも優しい目で俺を見つめてくれる。
俺だけを見つめてくれている。
今は俺だけのオヤジだ…
「んでね… ホモホモって言って、
ありえなくて、キモイんだって…」
「お前がキモイって言われたのか?」
「うぅん。 俺にじゃないけど、ホモがね。」
「そっか… それでお前は泣いたんだな?」
「うん…」
「で… お前は今日一番悲しかった事はなんだったんだ?」
「キモイって言葉が… 嫌だった… 悲しかった…」
「じゃぁ、お前にとってどんな奴がキモイと思う?」
「ん………」
「まぁ、ケンタは使わない言葉だから、いないかもなっ。
俺は関根さんって人に会った事もないから、
どんな人かはわからないが…
ホモがキモイって言ったのに、
BL好きの彼女を受け入れて好きになって、
結婚しようとしている人なんだろう?」
「うん。」
「悪い人ではないと思うよ。
ただ、彼にはまだ同性愛者の人が理解不能なだけで、
そう言っただけなのかもしれないよ。」
「そうなのかなぁ~…?」
「ケンタは関根さんに告白したのか?」
「うぅん、してない。」
「告白するのか?」
「しない… したくない。」
「お前は関根さんに憧れただけかもな…」
「憧れ?」
「そうだな… テレビの中のアイドルに恋するみたいに。」
「失恋しちゃったんだ… 俺…」
「失恋かぁ…
自分の感情や衝動が抑えられないくらいに、
また人を好きになればいいよ。」
「ゲイでもそんな風な恋が出来るといいなぁ~。」
「男は振られて、失敗して、
酒を憶えて、強く成長していくんだぞっ!」
「オヤジも失恋したことあるの?」
「あぁ、1度だけ大失恋したぞ。」
「どんな人に、どんな恋をしたの?」
「どんな恋かぁ~…
好きになっちゃいけない人を好きになっちゃったかな…」
「もしかして不倫?」
「不倫かもなぁ~… 俺は結婚してたしなぁ~…」
「オフクロよりも好きになったの?」
「あぁ、誰よりも世界一愛してたよ。
今でもな。 大失恋したけどな。」
「そんなに愛してたなら… なんで?」
「世界一愛した人だからこそ、
世界一幸せな人になってもらいたいんだよ。」
「俺も世界一愛せる人、愛してくれる人が出来るといいなぁ~?」
「出来るさぁ、今はそれの準備と練習かもな。」
「準備と練習かぁ~…」
************
オヤジサイド12(副)
ケンタは泣きながら俺に一生懸命、
今日あった出来事と会話を話しているが…
俺の頭の中では違う事を考えていた。
今まで付き合った彼女よりも、
口説いてきた女性よりも、
死んだヨメさんよりも、
甘甘にデレデレにイチャついてみよう。
コイツの反応を見る限り、嫌がっていない。
俺の熱い視線に、蕩けそうな目を返してきている。
時折、恥ずかしそうな目も見せてくる。
俺がケンタの目を覗きながらビールを飲むと、
一緒につられて飲んでいる。
流した涙を繋いだ手の俺側の甲で拭いてやると、
顔を擦り寄せてくる。
恋人同士… これで攻めてみる。
ケンタ、本当にスマン。 俺はお前が失恋した事が嬉しい。
嬉しさのあまりに、俺は笑顔になりそうなのを耐えた。
絶対に悟られないようにしていた。
本当は関根と言う男の事をボロクソに貶して、
ケチョンケチョンにして最低男にしてやりたかった。
俺のケントを泣かせた罰だ。
ケントがもう恋をしないように…
また誰かを好きにならないように…
ゲイの恋愛事情の大変さ難しさを俺は知っているから…
失恋した時に俺に甘えさせたい…
俺だけに…
俺に泣き付けばいい。
俺だけに頼ればいい。
俺だけを求めればいい。
俺に、俺だけの癖が付けがいい。
色々な矛盾や腹黒さやズルさが俺の頭の中を占領していった。
何やってんだ… と思いいつつ…
笑いそうになる俺、ひどいオヤジ。
嬉しそうな俺を隠すためにビールを飲み、おつまみを食べる。
チーズを食べる時に包み紙を片手では剥けないから、
いやぁ~、剥こうと思うなら、口を使ってでも出来るけど、
あえてそれはしない。
なぜなら、今の俺とケンタは恋人同士の設定だ。
ケンタの手を借りる事にした。
二人で仲良くチーズの包み紙を剥いた。
必要以上に俺がケンタに触り続けると、
嬉しそうに口元が少し緩み上がるのが見えた。
俺も、その口元を見て満足してしまった。
優しい目でケンタを見つめた。
ケンタの気持ちに気付かないように、
俺の気持ちを気付かれないような駆け引きをする。
その為に食べ物を口にしていたのかもしれない。
今も昔も変わらず、ケンタは可愛い。
22歳の男なのに、あの頃のままだ。
ケンタの話に、無難に受け答えをしていた。
あらかた今日の出来事を話し終ると、
今度は俺の事を聞いて来た。
俺は、ケンタが酔っている事を良い事に
どさくさまぎれにとんでもない事を話した。
俺の昔の恋愛話。
俺の昔に起こした罪…
事件… 駄目だ… 全部言ってはいけない。
嘘はつかないが…
無難に、はぐらかしながら…
恰好良く簡単に終わらせなければ…
ケンタに気付かれないように…
いやぁ~、気付いて欲しいのか…
思い出して欲しくなってきたのか…
今はあの時とは違う…
ケンタも大人になったし…
やっぱ… 俺、酔ってるな…
「あぁ、誰よりも世界一愛してたよ。 今でもな。」
俺が今言えるありったけの思い…
ケンタ…
お前は誰を世界一愛するんだろうなぁ~…
その時、俺は… どうするんだろう…
その前に全てを話したら…
お前は…
ケンタは…
ムスコのままで…
いてくれるのか…?
それとも…
俺の可愛いケンタ…
俺から離れないでほしい…
このまま…
手を繋いだまま…
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