アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
16
-
ムスコサイド16(主)
『グゥゥゥゥゥゥゥ…』
オヤジの腹の音。 笑いながらお互い離れた。
「オヤジ。 朝飯じゃ遅いし、昼飯じゃ早いけど、何がイイ?」
「そうだなぁ~… 中途半端な時間だなぁ~…」
冷蔵庫を覗く俺の後ろから、重なるように覗いてきたオヤジ。
「和食と洋食はどっちがいい?」
甘えるようにして、少し背中に体重を持って行って聞く。
「和食とか洋食よりも、お前の胃は大丈夫なのか?」
「胃は大丈夫。 俺も腹減ってるし。 ガッツリいけるよ。」
「おぉ、若さだよなぁ~。 二日酔いとは関係なしか…」
「うん。 薬のおかけで頭痛も治まってきたしね。」
「ケンタ。 俺、オムライスが食べたい…」
「わかった。 ふんわり玉子のケンタスペシャルを作るね。」
「おぉうっ。 それ頼むわっ。 シェフっ!」
「お任せ下さいお客様。 しばしお待ち下さい。」
「じゃぁ、ここはプロに任せて、俺は洗濯してくるわ。」
離れ際に俺の頭にオヤジが顔をグイィっと擦り寄せた。
昨日から俺って大事にされてるよなぁ~。 居心地イイ。
リア充って言うのか…? 彼女気分って言うのか…?
オヤジの彼女ってこんなに甘やかされて大事にされるんだ。
いいなぁ~。 羨ましいなぁ~。
俺… オヤジの彼女に… なりたい…
オヤジの事… オヤジの事… 誰にも渡したくない…
昔から俺はオヤジが大好きだっ! ん? 昔から??
なんか遠い記憶が蘇りそうなこの感覚… 昨日もあったなぁ~。
なんだっけ…? なにか思い出せそうな…? あれぇ~…
材料を切り分けて、サラダの準備をして、あとは炒めるだけ。
そう言えば、オムライスって…
俺が今の店に面接する時の試験だったんだよなぁ~。
練習で何個も作っては全てオヤジが味見で食べてくれたなぁ~。
オヤジが一押しのを作たら、褒めらて合格したんだった。
オヤジの味覚は俺よりも優れていると思う。
何が足りなくて、何を足せばいいかとか、的確にあてる。
そして、組み合わせや相性までも、俺よりも料理人向きだ。
そんな事を色々考えている内に最後の工程、玉子の仕上げだ。
玉子に空気を沢山含ませてとく、火の調整、油の量…
これからが腕の見せ所だ、集中して、一呼吸した。
『よしっ出来たっ! 見栄えもいいっ! フワフワ感最高だっ!』
お皿に盛り、カウンターにサラダと一緒に並べた。
「おぉ~、イイ匂いっ。 出来たかぁ~、うまそぉ~だっ!」
「うん。 お待たせっ。 食べようかぁ~。」
俺がサラダにドレッシングを掛けているとオヤジが戻ってきた。
「おいおい。 最後の仕上げが、まだじゃねぇ~かぁ~。」
えぇ… 何を忘れた…?っと考えていると、
オヤジが冷蔵庫からケチャップを取ってきた。
【ケンタ】【コウジ】っとそれぞれのオムライスに書いた。
「ははははっ。 オヤジ、女子力ありすぎっ!」
「そっかぁ~これが女子力かぁ~。 いいだろう。」
「んじゃ俺も、女子力を出そうかなぁ~…」
オヤジの前に【ケンタ】俺の前に【コウジ】を置いた。
「おぉ、お前もなかなかやるじゃねぇかぁ~。 可愛い事を。」
俺の頭のグリグリと撫で回して、俺の隣に座った。
「「いっただきまぁ~すっ!」」
いつもよりも近過ぎる距離。 お互いの膝があたる。
なんだろう… 急に恥ずかしくなってきた…
ドキドキが止まらない… 顔が、体が熱くなってくる…
************
オヤジサイド16(副)
あぁ~~~、このままケンタを抱き潰したい。
『グゥゥゥゥゥゥゥ…』終了のサイレンが鳴った。
ムードも雰囲気も台無しじゃねぇ~かぁ~… 俺の腹っ!
ケンタが俺に何を食べたいか聞いてきた。
俺はお前が作る物なら何でも美味しいから、何でもイイ。
メシよりも… 本当は… お前が… た…
駄目だっ! 駄目だっ! 首を振りたくなった。
冷蔵庫を覗くケンタの背中が…
冷蔵庫の扉を持つケンタの手が…
よしっ! ミッション再起動っ!
後ろからゆっくりとケンタの背中に重なり、手も重ねた。
ケンタの顔の横に俺の顔を持って行き、一緒に冷蔵庫を覗く。
ケンタの耳に囁くように俺は喋った。
俺が仕掛けた罠にケンタは見事に捕まり、それ以上の事をする。
俺の胸に寄っかかり、コテッと俺の肩に頭を置く。
コイツはぁ~! コイツはぁ~!
いやいや、本当に慌てるな俺っ!
俺から仕掛けてるが… 俺がトドメを差したら…
昔と同じだ。 俺の一方通行にしたら駄目だ。
ケンタが選んで考え出した答えなら俺は受け止めてもいいが。
そうだ、大人になった22歳のケンタが決めたならいいんだ。
4歳のケンタではなくて、22歳のケンタ。
今のケンタが言う事、する事に俺が答えればいい。
俺の一人よがりではなく、二人でする事ならいいはずだ。
もう、あれは昔の事だ。 あの時とは今は違う。
ケンタに話そう。 話してケンタが許してくれるなら。
ケンタが受け入れてくれるなら。
イヤ… まて。 逆に受け入れて貰えなかったら…
俺はどうしよう? 俺の事嫌いになったら?
洗面所のドラム式洗濯機の中、回る洗濯物を見ながら考えていた。
「俺、オヤジがいいよぉ~… 好きだぁ~…」
昨日のケンタの言葉が蘇ってきた。
あれは無意識の素直な本心のはずだ。
アイツは思った事を考えないで口に出す性格だ。
特にオヤジの俺に対しては嘘を付いたり駆け引きをしたりしない。
さて… どうしたものか…?
ケンタが俺を求めてくるなら、俺はそれに答えるだけでイイ。
ケンタが俺を求めなかったら、俺はそれに答えるだけでいい。
どっちを選んでも俺はそれに答えるだけでいいんだ。
そうだ、昔とは違うんだっ!!
今はケンタ自身が考えられる大人なんだ。
あとはケンタに任せよう。 俺はどんな事でも受け入れよう。
あれから18年、俺の罪はもう時効だようなぁ~。
いや、きちんと罰を受けて、罪を償ってきた。
よしっ、もう考えない。 自然の流れに任せよう。
ミッションとか利用とかズルとか駆け引きせずに
俺自身がケンタにしたい事をしよう。 言いたい事を言おう。
本当の俺を出そう。 ただし、決定権はケンタに託して。
それがどんな結果になっても俺が責任を取ればいい。
考えは決まった。 腹も据えた。 覚悟もした。
リビングの扉を開けてキッチンへ戻った。
タイミング良く料理が並べられていた。
ん? オムライスの上が寂しいじゃないか…
【ケンタ】【コウジ】ケチャップで俺は書いた。
ケンタに女子力と笑われたが、俺がしたい事なんだ。
けど…負けたぁ~。 ケンタの方が一枚上手だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 42