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次の日、そうたがクマのマスコットを作ってきてくれてるかなとうきうきしながら教室に行くと教室の中がワイワイと騒がしかった。何があったんだろうと教室の扉を開けると、クラスの中でもやんちゃな奴ら5,6人が何かを投げ合って笑ってる。
その真ん中にそうたがいて、投げられている物を追って右に左に。
「やめなさいよ!」
「男子最低!返しなさいよ!」
「うるせー!こんな女みたいなクマのぬいぐるみなんか大事に持ちやがっておかま~!きもちわりい!」
「あっははははは!」
クラスのやつがそうたに取られない様に投げ合ってるのは、俺が昨日頼んだクマのマスコットだった。
「なにやってんだ!」
大声で叫んでそいつらの所に駆け寄ると、リーダー格のやつが俺を見てニヤニヤと笑いながらクマのマスコットを上に持ち上げてブラブラと揺らした。
「こいつ、男のくせにこんなもん作りやがったんだってよ。マジ気持ちわりイ。」
「そうたに返せよ!」
ずい、と手を差し出すとおいつは俺を見てものすごくうっとおしそうな顔をした。
「何だよ。お前だってついこないだまでコイツの事バカにしてたじゃねえか!」
「それは…!」
そいつの言葉に思わず口ごもった。だって、ほんとのことだ。俺、昨日の事がある前まではそうたの事、なよなよしてて気持ち悪いって悪口言ってたし。
「今さらヒーローぶってんじゃねえよ!なんだよ、こんなもん!」
「あ!」
そいつは持っていたクマのマスコットを下にポトリと落としたかと思うと、思い切り足で踏みつけてから窓の外へ放り投げた。
「…っくそやろう!」
「なんだよ!」
きゃー、という女子の悲鳴が聞こえて、気が付くと俺はそいつに掴みかかって殴り合いのけんかになっていた。俺とそいつの大ゲンカは、誰かが先生を呼んでくるまで続けられて駆けつけた先生に二人ともめちゃくちゃ怒られた。
その後、職員室に連れて行かれて俺とそいつは喧嘩した罰として放課後のトイレ掃除を命じられた。ぶつぶつ言いながら掃除を終えるとそいつはさっさと帰ってしまった。俺は一人で、とぼとぼと歩きながらカバンを置いてある教室に向かいながら、職員室に行った後の事を考えていた。
先生に怒られてる最中も、お説教なんて全然頭に入ってこなかった。それよりも、早く校舎裏に行きたくて仕方がなかったんだ。さっき投げられた、あのクマのマスコットのことが気になって気になって。少しでも早く拾いに行きたかった。ようやくお説教が終わって、俺は教室に向かうよりも先に校舎裏に向かった。すると、そこにはそうたが泣きそうな顔をして立っていた。
『そうた』
声をかけると、びくってしてこっちを向いた。だけど、声をかけたのが俺だとわかるとそうたはもっと泣きそうな顔をしたんだ。
そうたの手に目を動かすと、そこにはボロボロになったクマのマスコットがあった。
『…ごめんなさい。』
『なんでそうたが謝るんだよ。お前は悪くないだろ』
そう言うとそうたはぶんぶんと頭を左右に振った。
『あの子たちに、言われたんだ。こんな、こんなの気持ち悪いって。…ぼく、ぼくのせいで、立花くんまでそう言われるところだった。』
『そんなの、』
言われたって関係ない、俺が欲しいって言ったのに。そう言おうとした言葉はポロリと落ちたそうたの涙で口から出る前に止まってしまった。
『ごめんね。』
『そうた!』
そう言って駆けだしたそうた。その背中を見て、ぎゅっと拳を握りしめる。なんだよ。気持ち悪くなんかねえよ。お前、作るの楽しそうだったじゃん。
『…っそうた!それ、くれんの待ってるから!俺に、それくれんの待ってるから!』
小さくなっていくそうたの、振り返らない背中に向かって大声で叫んだ。
教室に戻ると当たり前だけどもう誰もいなくて、はあ、と大きくため息をついてから自分の机に戻る。
もしかして、そうたがいてくれるかも。
そんな風にちょっとだけ思ってたんだけど、期待が外れたことでなんだかひどくがっかりした。
「…かえろ」
明日は土曜日。そうたに言った、野球の大会のある日だ。
カバンを掴んで、誰もいなくなった教室を後にした。
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