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秋の朝5
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「改めまして、おはようございます。」
お兄さんは顔をぺちぺちと叩いてから、俺を見て、話した。
「あ、おはようございます。」
「俺は掛川 朝日です。お兄さんのお名前はなんでしょうか。」
少し堅すぎる敬語と共にじっと目をみつめ、自己紹介をされる。
「あ、えと、藤井美月、です。あの、敬語、はずしてください。」
「え、あ、いいのー?ありがとーう!美月、くん?この間ごめんね?急いで降りたら鞄当たっちゃったみたいで、ちゃんと謝りもせずに行っちゃって、もうほんともやもやしてたの!」
砕けたとたんにぶわーっと話し出す。
「いや、あの、か、掛川さんの鞄当たったわけじゃなくて、その、つい」
「つい?」
「気付いたら謝ってた...というか...」
「.....ぷはっ」
けらけらと笑いだす掛川さん。
え、何か変なこと言ったかな。
「なにそれ!気付いたら!謝ってた!美月くん!いいひと!すごい良い人!」
けらけらを通り越してこれ爆笑だな。
沸点低いなこの人。っていうか、笑顔、綺麗だなあ....
見惚れていた俺を笑い終えた掛川さんは不思議そうに見つめる。
「ん?」
その、ん?の仕草が、とても可愛くて、思わず目をそらしてしまった。
「あっ!ねえ美月くん!気付いてくれた?これ!」
手の甲を指さす掛川さん。
「あ、勝手に見ちゃってすいません」
「なんでよー!俺、同じこと手紙に書いてたんだけど、よく考えたら握りつぶしちゃってたんだよねえ。そりゃ気付いてもらえないわ」
あぁ、あの紙は、俺への手紙だったのか。
「あ、あと!掛川さんってやめて!むずむずするから!」
「....あ、朝日、さん」
「はい」
へにゃ、と笑って答えてくれる朝日さん。あぁ、可愛い。綺麗だ。
「美月って良い名前だねえ。俺が朝日で君が美月。俺と君で1日を始めて1日を終えるんだねえ。空のリレーだ。」
俺は朝が好きなのに名前は夜で、真逆じゃないか、なんて思ってたのに。
この朝日さんの一言でこの名前も悪くないかもしれない、なんて思えるようになったんだ。
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