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金曜日の夜は好きな番組がやる。
真っ暗になった診療所を後にすると、足早に家へと戻る。
裏番組で長男の影司が気に入っているアイドルが出るだとかで、最近チャンネル争いになるから早く帰らねぇとな。
冷たい風に吹きつけられても背筋がゾクリとしたが、構わずに急いだ。
「帰ったぞー」
リビングとキッチンに向けて声をかけると、ガキどもの「おかえりー」という声がハモって返ってきた。
娘の璃子はリビングから走ってきて、「今日はギョウザだよ!璃子も手伝ったの!」と褒めてと言わんばかりに笑顔でまとわりついてくる。
その笑顔に疲れが癒される。
頭を撫でてやりながらリビングに行くと、テレビの前のソファで影司がスマホをいじっていて、嫁の永子に「テーブル片付けて!」とどやされていた。
一人足りない。
「垓は部屋にいんのか?」
「うん、垓兄ちゃんお部屋にいるの。お家帰ってきてからずーっと」
なんでまた?と聞く前に、永子に呆れた口調で「アナタ、垓にまた何かしたの?」と尋ねられる。
「またってなんだよ?」と思ってよくよく聞いてみると、垓は遊びに帰ってきてからずっと自分の部屋に閉じこもって、「お父さん嫌い、お父さん嫌い」とブツブツ唱えているらしい。
「父ちゃんがいらんことしたんだろうから、謝ってくれば?」
「いらんことって何だよ。俺は何もしてねぇよ。謝る必要なんかねぇよ」
「とりあえず、もうご飯だから垓呼んできて頂戴」
別に垓に嫌われるようなことをした覚えはない。
強いて言えば、石川のハゲと弐都のチビに「垓が仕掛けたイタズラに自分で引っかかった話」を言ったくらいだ。あれは笑った。
部屋のドアをノックして「飯だぞ」と声を掛けるも、中から返ってきたのは「うっさい。お父さんなんか嫌いだ」という声だった。
ちょっとカチンとしたので、無理やり部屋に入ると垓はベットの上で涙目になって体育座りをしている。
それを無理やり立たせようとしたところ、垓の野郎、抵抗しやがった。
「オラ!飯だ!出てこい!!」
「うるさい!!出て行け!!!父さんなんか嫌いだ!バカ親父!!!」
「あ゛ぁ!?テメェ父親に向かってなんつー口の利き方だ!!!」
「うっさいうっさい!!!僕は父さんのせいでいらん恥をかいた!どうしてくれる!?」
はぁ!?と思うと、垓は真っ赤な顔を隠すように両手で覆ってしまい、そのままベットにダイブした。
何があった?と尋ねるも垓は一向に話してくれない。
もうしらん、と部屋を出ようと思って回れ右をしたら。
「解決するまで、お夕飯ストップ」
と言って永子にドアを閉められてしまった。
そろそろ見たい番組が始まる時間なので、俺は垓の背中を撫でながら、
「何があったか話してくれよ。お前が怒ってる理由がわからなくちゃ、俺も謝れねぇだろ(棒読み)」
と言うと、垓は渋々ながらも理由を話し始めてくれた。
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