アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
<白雪姫のS>
-
森崎さんのご実家から送られてきたというダンボールは大きく、ずっしりと重かった。
箱の側面には青森リンゴという文字と林檎の絵が書かれていたので中身は見なくともすぐにわかった。
すぐに森崎さんはご実家に謝礼の電話を入れたところ、今回林檎を送ってくださった経緯を聞いた。
「実家のほうに、親戚が大量に送ってきてくれたみたいで、食べきれないからって色んなところに配ってるみたい。それで、俺のとこにも送ってきたみたい」
「そうですか。何かお返しをお送りしましょうか?」
「いいよいいよ。それよりさぁ、俺達もこれ先生に持ってったりしないと二人じゃ食いきれないよねぇ」
二人でダンボールの中を覗くと、大きく芳醇な香りのする林檎が大量に入っていた。
食べられない、嫌いという訳ではないが、そこまで果物を食べる方ではない私と森崎さんは、大量に敷き詰められた林檎に二人で顔を見合わせた。
「七瀬さんに差し上げて、お菓子作りに使っていただきましょう」
「あ、それいい。アップルパイとか作ってもらえばこう太くんも…ごめん」
不意に森崎さんのスマートフォンが震えて着信を告げる。
どうやらまたご実家からの連絡みたいで、いつもどおりの調子で森崎さんは電話に出たのだけれど。
「え…あ、希美…ちゃん?」
サッと顔色が変わったのを見逃すはずもなく、彼の口からでた女性の名前に、少しだけ胸がざわついた。
[Sweet]
森崎さんのご実家から林檎が送られてきたその日。
林檎を石川先生や七瀬さん達に持っていくついでということで、森崎さんをご実家まで送り届けることとなった。
「り、りんご下の方痛み始めてたね。ごめんね、多分綺麗な奴は他の親戚に送ったんだろうな。俺のとこはまぁ、身内だしちょっと悪くてもってことだと思うんだ。ホント、おかんに抗議しとくね」
「お気になさらず」
森崎さんの声が上ずり、目も若干泳いでいた。
ご実家が近づくにつれて森崎さんの表情が段々とこわばっていく。
ご実家から『家の前に希美ちゃんが来て、泣いててどうしようもないからどうにかしてくれ』という連絡が入ったのは今から数分前。
森崎さんは動揺しながら「いや、そんなん知らんし!」と騒いでいたけれど、お父様が家に上げてしまったからとか言われて、「じゃあ、今から行くよ」と困った顔で電話を切った。
「いかがされたんですか?」
「いや…その…。なんかさ、その。…元カノが、俺の家に来て大泣きしているらしいんだ」
元カノ、元彼女、元、恋人。
その単語を理解した瞬間、おそらく森崎さん以上に内心動揺してしまった。
―――元彼女は希美という名前なのか。
しかし不思議なことに、頭は冴えていく。
嫌そうな顔で「ちょっと実家行ってくる」と言う森崎さんに「では、お送りいたします」と申し出たのは、少しだけ興味があったからだ。
車を彼の実家近くで止めると、私は車から降りなかった。
気の乗らなそうな表情のまま家へと向かっていく森崎さんの背中を見送ってから、こっそり車を動かして実家の玄関が見える位置に移動した。
森崎さんが玄関を開けた途端、可愛らしい格好をした女性が泣きながら飛び出してきて森崎さんに抱きついていた。
栗色のロングヘアーはゆるくパーマがかけられていて、全体的にふんわりとした柔らかいフリルのついた服は淡い色をしている。
顔は泣き顔だけれど、可愛らしかった。
心がざわつく前にハンドルを切り返すと、石川先生達のマンションに急いだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 100