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ひっ
くっ
喉がひく付く音がした。
「!あっ、とっとりあえず、泣くなよ山田くん・・・」
俺はハっとし、持っていたハンカチを山田くんに渡した。山田くんは黙ってそのハンカチを受け取った。
その手はにわかに震えている。
俺は数度口をパクパクと開け閉めした後、
大きく唾を飲み込み、山田くんに向き直った。
「えっとさ・・ほっ本当なのは分かった・・・。でもなんで?
なんで俺なの?」
俺は全くわからない。
だって俺と山田くんには接点がない。それも全くと言っていい程だ。
俺が山田くんを知っていたのだって
クラスが一緒だった事もあるが、それは彼が不良だからで。不良と一緒のクラスになるとあったらそれなりに警戒して、不良である彼、山田くんを知ろうとする訳で。
でもそれは、山田くんの場合の話で。
俺はどこにでもいる男子高校生で
不良でもなければ、ムードメーカーという訳でもなくただ仲間内でワイワイと話す程度で
クラスが一緒という事以外では
彼の記憶に残るましてや
好き
という感情を持たれるシチュエーションは皆無に等しい。
黙ったまま山田くんを見つめると
涙が収まったのか、目からハンカチを話しながら山田くんは言った。
「俺は、お前をずっと見てた・・・
ずっと見てる内に惹かれて、それで・・・」
山田くんは下を向いた。
そしてそれ以上は喋らなかった。
俺は山田くんをただ見つめるだけで
お互い言葉を発するでも無く、ただ風が頬をなでるだけだった。
少しの間を置いた後、山田くんは下を向いたまま言った。
「・・・返事・・・」
「・・・へっ?」
「だから・・・返事だよ・・・!」
「っあ、あぁ」
山田くんは渡したハンカチを強く握りしめながら言った。俺はそんな山田くんを見つめながら返事を考えた。
「俺・・さ・・・えっとなんて言えばいいか分かんないけど」
山田くんの手に、更に力がこもったのかハンカチがくしゃっとしている。
「えっと・・・やっぱり俺、山田くんの事しらないし・・・
それに俺たちおとー
下を向いていた山田くんがもう一度
まっすぐに俺を見つめていた。
ハンカチを強く握る手は震え
止まったはずの涙は
また溢れそうに瞳を潤わしている。
俺は瞬きを忘れたかのように
山田くんを見つめた。
ふと
風がふわりと
山田くんの髪をゆらした。
涙が一粒、流れ落ちた。
「っーーーー」
ごくり
とどちらとも分からない
唾を飲み込む音がした。
今思えばこれが恋に
落ちた瞬間だったのだろう。
まっすぐ見つめる君の瞳に。
にわかに震える君の手に。
あぁーー
「ーー山田くん」
彼の瞳に映る俺の影
俺は少し笑った
「これからよろしくね」
山田くんは数度瞬きをして
少し首をかしげたと思ったら
顔を真っ赤に染め上げた。
その顔に、触ってみたい
そう無意識で感じた俺は
自分自身の感情にまだ気づいていなかった。
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