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No.36/モテ男
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「えっと、じゃあ何で怒られたのか分かんねえんだけど…。」
「……怒った訳じゃない。」
ん?って真琴の頭が傾く。本当に分からないって顏。
何かそんな様子を見てると距離を置こうとしてた努力も無駄なもんに思える。きっとこのまま離れたらまた自分が悪かったとか思って、見当違いの事で謝ってくる気がする。いや、もう絶対そうだろ。
「あのな。…キスが嫌なら言ってくれたらしなかった。俺は今までそういう行為で嫌がられた経験がねえから言ってくれねえと分かんないんだよ。…いや、もう真琴には手を出したりしないけどさ。」
してえけど死ぬ気で我慢する。真琴が好きな人の側で笑って居られるように。
「……もうしないのか。」
小さな声。顔がゆっくり俯いた。
顎から雫が落ちる。
「っ!真琴、」
びっくりして慌ててハンカチを取り出して顔を覗く。ぼうっと開いた瞳、ポロポロと次々に出てくる涙。
頬を拭って目頭にハンカチを当てたら真琴の手がハンカチごと目を押さえる。
「…ぅ、ぅ、」
結んだ口から漏れる嗚咽。ああ…。
目の前の体に伸ばしかけた腕を止める。心の中で色々と葛藤して自制心が愛おしさに負けて抱き締めた。
ぐっと引き寄せ同じ位の位置にある頭を撫でる。手の平が黒髪を滑る、ああ…愛おしさが溢れる。
「…泣くなよ。」
楓の声が頭に過る。泣かせるのは許さない…分かってる。俺だって泣かせたくはない。
「どうしたんだよ、」
グズッと鼻をすする音。
「…だって、…もう…しないって、」
「ああ。真琴が嫌だって思う事はしない。だから安心しろ。」
「イヤ…とか…思ってねえ…よ。」
切れ切れに言う言葉。合間でしゃくりあげる。子供か!…でも、かわいい。それにさ、今…、
「嫌じゃなかったのか?でも思いっきり避けただろ。」
「…だって、…オレの…息が…変な匂い…だったし…京平は…いちご…、」
んー、真琴の息が変な匂い?あ、激辛スナックか。んで、俺はいちごスナック。
「……。」
なんだそれ!んな事で避けられて真琴に怪我まで負わせて死ぬ程落ち込んで、断腸の思いで原と席替えしたってのか!!
やり場の無い憤り。そして…自分の滑稽さに笑えてくる。
「嫌われ…たく…ない。」
もう、なんだそれ…。
「はぁ…。あのな真琴、んな事で嫌いになったりしねえから。俺はお前が好きなんだ…覚えてるか?」
もう何回目だ?同じ相手に告白とかさ…。つか告白自体が初めての経験だったわ。俺は真琴相手に色んな初めてを体験してる。
「…ん。…セフレ…続けて…いいのか?」
「はあ?!」
今、セフレ?って聞こえたぞ。ちょっと待て。頭が混乱してきた。
一旦真琴を腕から解放し、泣いてる手を引いて椅子に座らせる。とっくに授業が始まってる時間だけど気にしない。俺も隣に座って空き教室の埃っぽい空間で頭を悩ませる。
いつからセフレって事になったんだ…。あ、そういやスマホにセフレからの連絡がばんばん入ってんだよな…面倒だから無視してるけど。俺も能戸みたく身辺整理すっかな…。
「ちゃんと…キイチにも…バレないように…頑張ってる…から、」
ハンカチを握り締めてうるうるした真っ赤な目で俺を見る。…かわいい。キスしたい。…いやいやムラっとしてる場合じゃない。
「え、能戸?何で?」
「京平…イヤだろ…。」
益々、頭が混乱する。
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