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No.51/モブ男
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ずっと耐えてる。もう時間の問題だとは思う。
「兄ちゃんどうしたの。体調悪い?」
首を振って答える。声とか出せない、オレにしては頑張ってガマンしてんだ。
「…何で喋んないの。」
顔を覗き込まれた。あ、ヤバイ。目が潤んでる気がする。楓の反対側へ顔を向ける。
「…何で顔を背けるの。」
ちょっとイラ立った声。ぐいっと腕を引かれた。体が傾いて無理矢理楓の方を向かされる。
「……兄ちゃん、」
慌てて顔を隠す。だって楓のせいじゃないけど…楓を見たら泣いてしまう。
「どうかしたか、」
龍壱の、のんびりした声。
「ぅ…、」
もうガマン出来なくって、楓を押し退けて部屋から走り出た。
「兄ちゃんっ!」
「真琴?」
「桜井さん、」
3人の声が聞こえたけど、玄関に向かって階段を急いで降りる。外へ出てどっかで泣きたい。家の中じゃ楓がきっと追ってくる。
スニーカーに足を突っ込み背中の方から聞こえる階段を降りてくる足音と、楓のオレを呼ぶ声を無視して勢い良く玄関を開けた。
「っおわ!…真琴?」
なんでか京平がいる。
「京平…、」
もう、ダメだ…、
「うぅ…、」
ぼろぼろ落ちる。手の甲で抑えたけど、手の甲って水を吸ってくれない…。
「おい、どうしたっ!」
慌てた声。手のひらが肩に置かれる、そこだけ温かい。京平の存在を感じて余計に涙が出て、頬と腕に流れていく。
「兄ちゃんっ!」
後ろから楓の手が腕を掴んだ。ぐっと引かれて体が揺れる、肩を掴んでた手が背中に回って支えてくれた。
「…泣かせたのお前?」
「……あんたに関係ない。」
「有るに決まってる。俺に泣かせるなって言ったのは誰だよ。泣かせる奴は許さねえんだろ?」
「……。」
オレの腕から手のひらが離れた。
「真琴、俺の家に行こう。」
楓の事を見るのが怖い。オレは楓のせいじゃないって言えなかった。心のどこかで楓のせいだって責めてる。オレが悪いのに…。
「…うん、」
京平が背中を押してゆっくり動き出す。促されるままに一緒に歩き出した。
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