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No.62/モブ男
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京平はカッコいい。なんでか、オレを好きだって言ってくれてる。
「もっとこっちに寄らねえと落ちるぞ、」
「うん。」
腹に腕が回ってぐっと引き寄せられた。ベッドの端に居た体が京平にくっ付く。温かくて気持ちいい。
「こっち向けよ、顔見たい。」
言われて体の向きを変える。向かい合う顔、やっぱりカッコいい…セットしてない髪、首筋、肩…全部に触った事が夢だったような気がする。もっと触ればよかった…今のオレには怖くて触れない。もう怒らせないようにしねえと、気を付けないと嫌われる。
オレはたまにダチから突然避けられたりする事がある、理由とかよく分かんねえけど、すっごい仲良くしてたつもりなのに。楓と紅葉に相談するとやっぱりあいつはそうだと思ったって言うし、意味が分からん。とりあえず謝ろうとしても、それすら避けられるし。だからオレにはもうどうする事も出来なくなる。
思い出して悲しくなってきた。抱きしめて欲しいとか言えねえから、自分の肩を抱きしめて目を閉じる。
大丈夫。まだ京平から別れようって言われてないだろ。
すぐに眠りはやって来た、もう今日は終わり。何も考えない。
「おい、もう寝てんの。…また泣いてるし、」
遠ざかる意識。声が聞こえた気がした。
あ、朝食作らないと。
ハッとして目が覚めた。枕元に置いてたスマホを手に取って時間を確認する。7時前、いつも学校に行く為に起きる時間。
今日は母さんが居ない、いつもだったら二度寝するけど起きて朝飯作んねえと。
「…ん…あれ?」
部屋を見回す。オレの部屋じゃない。
「あ、そうだった…。」
横を見ると壁際に京平が寝てる。ゴールデンウイーク中はここに泊まるんだったな。
そっと、起こさないように気を付けてベッドを降りて部屋を出る。
「洗濯物…、」
浴室へ行って洗濯機を回す。
「よし、今度は朝飯の用意。」
楓と紅葉の分も作ろう。きっと朝が弱い2人は何も食べずにここへ来る。
テーブルの上に4人分の箸とコップ、卵焼きと鮭の塩焼きを盛った皿にラップを掛けてそれぞれの席の前に置いておく。ご飯と味噌汁は後で、みんなが揃ってから注ごう。
台所を離れて、洗濯物を干しに行く。今日は、晴れてて天気がいい。庭に出て、干した洗濯物を背にしてぼんやり空を見上げる。
美味しそうな雲を探してみる。ちょっと薄くて空が透けて見える様な、綿菓子みたいな雲が美味しそうだと思う。五月の空はそんな雲がたくさん浮かんでる。夏の空の、もくもくした真っ白くて濃ゆい雲は食べにくそうだから今の季節が好きだ。
「あ、あれが美味しそう…、」
うん。あの雲が一番だな。形もちょっと小さくて丁度いい。
「真琴っ!」
干したシーツと服の間から手が伸びて腕を掴まれた。
「京平。」
抱きしめられる。
「びっくりした…起きたら居ねえし。帰ったかと思った。」
「…おはよう。朝飯出来てるぞ。」
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