アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
No.65/モブ男
-
「兄ちゃん、ちょっとこっち来て。」
「このソファーに座って。」
夕食の後、2人に呼ばれて座った。2人はそろそろ帰るから見送ろうと思ってたところだった。
「どうかしたのか?」
なんだか改まってる。ソファーに座ったオレの前に膝立ちのまま、左右の手を楓と紅葉がそれぞれに掴んだ。
「兄ちゃん…洗濯物が溜ってるんだ。」
楓が困った顔をした、
「僕達は家事やった事無いから洗濯機の使い方とか分かんなくて…、」
紅葉が手を合わせる。
「今日は一緒に家に帰ってくれないかな。本当、駄目な弟でごめんね。」
「ごめんね兄ちゃん。でも凄く困ってしまって…頼れるのって兄ちゃんだけだし。」
そっか…そうだよな。2人はいつも勉強する事を優先する様に父さんに言われてたみたいだし、家事出来ないもんな。
「うん。分かった。」
「わあ、兄ちゃん有難う!」
「今から一緒に帰ろう!」
ぎゅっと2人が抱きつく。すごい感謝されてる、頼られるのって嬉しい。普段はあんまり兄ちゃんらしい事出来てないから、2人のお願いは叶えたい。それに家の事はずっと気にしてた。
「京平、」
夕食の後片付けをしてくれてる京平に、今夜は家へ帰る事を言いに行った。
「絶対、明日の午前中に来いよ。」
京平が玄関でオレに念を押す。勿論、一緒に勉強する約束だからここに来るつもりだ。
「うん。ごめんな、また明日来るから。」
「お邪魔しました。」
「帰ろ。電車の時間もあるし。」
オレの荷物を持った紅葉。楓に腕を引かれて京平にぶんぶん手を振った。
「また明日な。」
「ああ。」
振り返してくれる。家に帰る事を京平は反対してたけど、オレの気持ちを正直に話したら分かってくれた。
ゴールデンウィークに旅行を決めた母さんから留守を頼まれてたのに、オレは急に京平の家に泊まる事にしてしまったし、怒られたりはしなかったけど…頭のどっかで母さんに対して罪悪感がある。
京平はそれなら仕方ねえなって言ってくれた。優しい…怒らずにちゃんと話しを聞いてくれたし。京平とも一緒に居たいって思ってる事、話せば良かったな…。
「ほら、兄ちゃん急がないと。」
「電車来ちゃうよ。」
「うん。」
2人が急かす。慌てて歩く速度を速める。
「嫁…、」
嫌じゃねえよ。結婚は出来なくても冗談だって分かってるけど嬉しかった。
あれもプロポーズになんのか?
「はいって返事すれば良かったな。」
もう言ってくれないかもしんねーしな。
「何が?」
「何の話?」
「ううん。何でもない。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
129 / 235