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No.72/モテ男
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教室へ向かう途中、廊下を友達と歩いている鳥海を発見した。
「お、鳥海。」
「ドリガイ、だずげで…。」
途端に野菜オレを持った手を奴に伸ばし、ヨロヨロと寄って行く真琴。
「桜井さん、どうしたんですか?」
「これマズくて飲めない。でも京平が買ってくれたから捨てきれない。」
びっくりしている鳥海に涙目で訴えている…かわいいなおい。いや、俺も一応挑戦はした…半分飲んでくれって頼まれたし…でも匂いからもう無理だった。
「おい、渉っ。お前、加賀さんと知り合い…?」
鳥海の隣にいる男がそう言いながら何故かポカンと俺を見てる。誰だろこいつ。
「何で俺の名前知ってんの、会った事あったっけ?」
「はっ?あっ、いえ、いいえ。遠目に見た事はありますっ。だから多分知り合いじゃないです!すみません!」
「…落ち着けよ。」
見かねる程の動揺振り。多分どころか思いっきり初対面って話。
「あー。この学校の生徒で加賀さんの名前知らない奴って殆どいないですよ。何せY高一番のモテ男ですし、かっこいいって有名ですもん。特にこいつは憧れてるから、」
鳥海の説明に正直驚く。俺は極力他人と関わらずにやってきた…それなのに。
何だよ何時の間にそんな有名になってたのか…そういやこいつも初めて会った時に俺の名前知ってたから変だなとは思ったけど…。
「はぁ…、最悪。」
「なんでだよスゴイ事だろ。京平がカッコいいのみんなが認めてるって話だろ。」
真琴が嬉しそうに目を輝かせる。…もう胃のむかつきは治まったのか、それとも忘れてるだけなのか。
「別にそんなの嬉しくねえよ。」
お前が俺を好きでいてくれるだけで充分だし。モテるのなんて良い事ばっかりじゃねえ。俺の中にはまだ中学の時の事が燻ってる。…やっと今、人並みに恋も友情も勉強も学んでるんだ。
「カッケェ!」
両手を握りこぶしにして喜ぶ男。鳥海の友達じゃなかったら無視するところだ。
「そんなところが魅力なんすかね。…あの人は」
「トリカイこれ飲め。」
喋ってる途中に割り込んだ真琴が野菜オレを押し付ける、
「…はい。桜井さん有難うございます。俺はこれ割と好きですよ。」
「えっ!ホントか、なら良かった。野菜とカルシウムの両方摂れるから体にいいもんな。」
「ははっそうですね。じゃあ責任持って俺が全部飲んどきます。」
鳥海が笑って頷く。不意に空いてる方の手が伸びて真琴の髪に触れようとした。
「真琴、そろそろ昼休み終わるぞ。」
ぐいっと引っ張り引き寄せる。奴の手が途中で止まる。
「あっホントだ。トリカイ達も急げよ。じゃあなー。」
何にも気付いてない真琴は無邪気に手を振ってる。今の鳥海の行動がどんな意味を持つかなんてのは分からない。ただ、そう容易く触れさせるつもりはない。
「鳥海、弟の方と仲良くしてろ。」
意味が分からずキョトンとしてる友達と、ちょっとびっくりしてる鳥海。俺の思い過ごしだったか…牽制し過ぎたかもな。
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