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No.76/モブ男
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塾の授業中なのにあの言葉を思い出す。隣の東野をチラッと見ると前を向いたままちゃんと話を聞いてる、オレだけが気にしてるみてえだ。
ちゃんと集中しないと。今は勉強しに来てるんだから。
京平は家庭教師の先生と勉強中だから休憩時間に電話とかしたらダメだよな…明日会って話そう。約束はちゃんと覚えてる、オレ1人で悩まずに京平に全部話すつもりだ。
「桜井、一緒に帰ろうぜ。電車だろ?」
東野はさっさと勉強道具をショルダーバッグに詰めてオレを待ってる。
「そうだけど、弟も一緒でいいか?迎えに来てくれてるから。」
いつもは別の友だちと帰ってんのに急にどうしたんだろ。でもそんだけ仲良くなったって事か。
「あーあの背の高い奴か。いっつも一緒に帰ってるのって弟だったんだ。」
そんな事言う東野はオレより低い身長でキイチと同じくらいだ。一緒に教室を出て階段を降りる。今日は紅葉が来てる筈。
「うん。夜は1人だと危ないからって、」
「はあ?お前の弟って、どんだけ過保護だよ。」
呆れてる東野にオレが口を開くより先に階段の下から返事が来た。
「過保護でブラコン、溺愛してますけど何か問題でもありますか。」
なんかイラついてる声。あれ?なんでだ、紅葉じゃない。
「楓、待たせてゴメンな!」
長い事待たせてしまってたのかもしれない。慌てて階段を全部降りて楓の前へ行く。
「大丈夫。そんなに待ってないよ。」
オレの背後に立ってる東野をチラッと見ただけで、いつもみたいに笑顔で頭を撫でてくる。
「紅葉はどうしたんだ?なんかあったのか?」
「ううん。明日土曜日だし、渉が泊まる事になったから家にいる。それに僕が兄ちゃんに会いたかったから代わってきた。」
「そっかありがとうな。」
「ちょっと話がまるで分かんねえんだけど。」
「あっ、ゴメンな。えっと塾で隣の席の東野。」
楓に紹介して、
「で、弟の楓。」
東野に紹介する。
「東野も同じ電車だから一緒に帰ろうって、」
「いいけど。じゃあ兄ちゃん行こう。」
楓はオレの手の平を握るとさっさと駅に向かう。
「手繋いでる…。なんなんだ、」
後ろからついてきた東野がブツブツ言ってる。兄弟で手繋いだらダメなのか?あ、東野1人で歩いてるし寂しいんかな。
「今日はどこまで進んだの?」
楓に聞かれていつものように授業内容の話をして、ちょっと分からなかったところとか補足説明してもらう。
「ちょっと待てよ。なあ、弟なんだろ?何で高3の授業内容とかの話してんの。」
驚いたように言われる。そっか東野は楓の事知らねえもんな。教えてやんねえと。
「えっと、楓はM学園の2年生で副会長してて特待生で運動も得意で、とにかく頭が良くてカッコいいんだ。」
スゴイだろ!
「兄ちゃんはかわいいよ。」
「何だ、この兄弟…。」
あれ、なんかポカンとしてる。兄弟の自慢とかしちゃダメだったかな。でもホントの事言ったのに。
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