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No.78/モブ男
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「あのな、だからそれは東野の誤解なんだ。京平はカノジョ取ったりしてないって。」
10月になってもう何回目なんだろ、この説得。一緒に塾へ向かう電車の中、今日は座席に隣同士で座ってる。でも東野はちらっとオレを見ただけですぐに話題を変えた。
「昨日の数学の問題でさ、ちょっと教えて欲しいのがあるんだけど。」
ごそごそと鞄を探ってテキストを取り出す。
「東野…、」
困った。なんでこんなに話を聴いてくんねーの?
「京平、またダメだった。」
昼休み、昨日の事をしょんぼりと報告する。隣の席の京平は、椅子をオレの方に向けて呆れた様に言った。
「あのな、別に説得とかしなくて良いって言っただろ。」
「でも、京平が誤解されたまんまじゃイヤだ。」
だって悔しい。誤解で友だちじゃなくなるとか、オレだったら泣いてしまう。いや、もうすでにちょっと涙目になってる。東野は全然話を聞いてくれない。
はぁ…。京平がため息を吐いた、オレの近くに寄って小声で話す。
「これはあんまり言うべき事じゃねーけど…。東野は確かに誤解してるし、彼女を取ったりはしてない。でも高校に入ってからさ、真琴と付き合う前までの俺は他人の女とも寝てたし、結構ひでえ事してたんだ。だから奴の誤解が解けなくてもいい、今迄の事を考えると自業自得ってやつ。」
他人のカノジョとも…。ズウゥンって頭の中が暗くなった。
やっぱそっか。モテ男だもんなぁ。オレはうわさ話とか気にしてなかったし、京平の事も龍壱が教えてくれるまで名前すら知らなかった。
「……でも、東野の事と高校に入ってからの事は別なのに。」
「もう良いって、こんなんじゃ誤解は解けねえし。でも今はそんな事はしてねえよ、」
「うん、ちゃんと信じてる。ゴメンな、勝手に意気込んでたオレが悪いのに。」
自分自身の事を悪く言わせてしまった、オレがしつこくした所為だ。
「真琴が分かっててくれればいい。とにかく、もう東野に俺の話をすんな。俺の事は気にする必要ねえよ、あいつと友達でいたいんだろ?」
「…ん、」
本当は東野が京平を許せないのなら、友だちでいるのは難しいかもって思ってる。なんでもない様に言うけど京平の心のキズになってんじゃねえかな。
「そんな顔すんなよ。いつもみたいに笑ってろ。ほらコレやる。」
京平は机に掛けてる自分の鞄を探って、プリン味のクリームが入ったチョコを2つ机の上に転がす。
「へへ、ありがと。」
思わずほっぺが緩む。これ好き。
「お、プリンチョコ!一個もらい!」
龍壱がオレの背後から腕を突き出して来た。
「ダメだ、やらねえ。」
ガバッと前屈みになってチョコを守る。せっかく京平がくれたのに。
「ケチ、」
「原、お前にはコレをやるよ。」
京平がまた鞄を探って、抹茶クリームの入ったチョコを取り出す。
「すげえ、なんでも入ってんだな。」
オレが感心してると、
「加賀、お前…ついに俺に狙いを定めて来やがったな。恐ろしいヤツめ。しかし俺には、えりりんという激かわ彼女がいる!」
「いや、要らねえなら別にいいけど。廊下歩いてたらその辺の女に貰ったやつだし。」
「なにぃ!このモテ男め!」
「え、このプリンチョコもか…、」
ガッカリする。いや、ショックって感じだ。しゅるしゅると、さっきまでの喜びがしぼんでいく。
「いや、それは買ってきた。好きだろ?」
「っ!うん。」
良かった。京平の優しさにまた一気に気持ちが上がった。
「あ、そういや担任から真琴呼んでくれって頼まれてたんだった。お前なんかしたん?」
早速チョコを食ってる龍壱がモゴモゴと言った。
「…行ってくる。」
また気持ちが沈んだ。
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