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No.83/モブ男
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美少女君を見た土曜日から二週間経った。今日も朝から龍壱の補習に付き合った後、家の近くのスーパーへ向かってる。
今日は仕事に行ってる母さんに代わって家事をしようと決めてた。楓と紅葉に昼飯作ってやんねえと。
「うお、寒い!」
買い物して店を出ると、途端にものすごい寒く感じた。制服の上にコート着てんのになー、やっぱマフラー要るなあ。
あちこちに飾られたクリスマスツリーとか、リースとかイルミネーションでいつもの景色がキラキラしてる。あ、終業式がクリスマスだ。もう冬休みかぁ。早えな!
「京平と一緒にケーキ食いてえな。」
やっぱダメかな。受験勉強大変みたいで、今日は補習に来れなかったもんな。ていうか昨日は松田さんの課題で死んでた。
でもやっぱり明日の朝会ったらクリスマスの予定聞こう。よし、そうしよう。
昼飯はナポリタン。みんな好きだし簡単で美味い。
「ふんふーん、ふふふーん。」
自作の鼻唄歌いながら買い物した袋を提げて近くの公園を通りかかったら、なんかベンチに変な奴が。手のひらに乗せた小さな壺みたいなのに話し掛けてる…。
「椿、椿……うぅ…やっぱ接着剤とかじゃダメなん?」
そう言って、抱え込んだ膝に顔を埋める。
泣いてんのか?大丈夫か?一見くっついている様に見えるけどなぁ、この壺。間近で見たら、くっついてねえのかな。確かめる為に屈み込んで手のひらに乗ってる壺を見る。
うーん。
「あのさ、接着剤で良いんじゃねえの。くっついてるだろ。」
オレの気配に気付いてなかったのか、膝におでこを乗せてた奴の肩がビクッとして、
「ぅわっ!」
ギョッと目を見開いてこっちを見る。その顔を見てオレも驚いた。
「あっ、美少女君。」
「え?」
オレの言葉でキョロキョロと周りを見て美少女を探してる。本人に向かって美少女とか言っちゃダメだよな。
「いや、えーと…M学のナントカユウヤ君?あれ苗字忘れた。あ、オレは桜井真琴。M学の2年に双子の弟がいるんだ、」
「え、桜井副会長のお兄さんですか?」
「うん。」
ぐうぅぅ……。腹の音が聴こえた。
「腹減ってんの?」
「え、えと。…はい。」
「うち来る?すぐ近くだし、今日はナポリタンだぞ!オレが作るから遠慮せずに食って行けよ。あ、弟も居るしさ。」
「でも、悪いですし。」
ぐうぅぅ……。再び腹の音。
「な!行こうぜ。」
「…有難うございます。あ、俺の名前は杉山夕夜です。」
ショルダーバッグの中に丁寧にタオルで包んだ壺を入れ、ベンチの隣に停めてあった自転車を押しながらオレの横に並ぶ。
「あ、そうだった。スギヤマか!」
「はい。桜井先輩…あ、副会長とかぶりますね。」
「真琴でいいぞ。」
「まこと先輩はY高校なんですね。副会長のお兄さんなら3年ですか?」
オレの制服を見てからスギヤマが聞いてくる。
「うん。」
「そっか受験勉強大変ですね。」
「いんや、オレはもう専門学校合格して暇なんだ。」
「へえ、どんな専門学校ですか?」
「保育士。」
ちょっとびっくりした様にオレを見る。
「保育士…ああ、男の人もいますね。何だか良いですね。そっか、そんな道もあるんですね。」
瞳がキラキラしてる。興味あんのかな。
「飯食ったらパンフレットとか見るか?」
「はいっ。お願いします。」
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