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トリカイの冬休み(2)
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早く彼に会いたくて、電話してみたくて、必死こいて本を読む、読む…、読む…。
「やっと、全部読んだぁ!」
やれば出来る!すげえよ、最短記録の2日間。1冊丸々読むのって大変でさ、いっつも一週間以上はかかるのにさ。へへ。
「よしっ!さあ、書くぞ!」
ほぼ徹夜、朝日が眩しい。作文用紙をテーブルに広げてシャーペン持って、
「ん?んん?」
何故だ!どうしたんだ!全く書けん!
「ハガァッ!まっったく内容覚えてねえ!つか、難し過ぎて理解出来なかったっ!」
やっべえ。どうすんだよ、また読むのか?いや、無理無理無理無理…。
「……ここは、ネットで調べて適当に書くか…。」
いや、ズルい手だって思うけど、一応読んだんだ。本当、読んだんだよ。でも感想文とか書ける程の理解が出来ねえんだもんよ。
「そだ、能戸さんに先に本を渡そう。」
電話かけてみたい。声聴きたい。この感情が何なのかなんて深く考えずにいたい。
「もう読んだんだ、早かったね。」
待ち合わせは近所の図書館の前。彼はグレーのダッフルコートを着ていて、ちょっと可愛らしい雰囲気。
「いえ、読んだだけです。」
本当、ただ読んだだけ…。
「え、感想文は書いてないの?」
「はい…。」
「なら鳥海が持ってなよ。俺はいつでもいいよ。先に宿題を終わらせないと駄目だろ。」
急がせてごめんねって能戸さんが俺の顔を少し下から見てくる。ああ、長い睫毛が瞬く…綺麗だ。キュンって胸が縮んだ。
「でも、きっと書けないから…、」
「どうして?」
どうしてもこうしてもない。そんなふうに見つめられたら、そしたら俺の心はもう…、
「内容が難しくって理解出来なくって、書けないんです、」
「ぷっ、あはははっ!」
楽しそうな笑い声。はっとする、やっべえぇぇ!ついつい、俺のバカさをバラしてしまったぁ!
「ねえ、良ければ宿題手伝おうか?その本さ実は1度読んだ事あるんだ。でも好きな作家だからまた読みたくなってさ。」
「え、えっと、いいんですか?本当に?」
「うん。鳥海の家にお邪魔してもいいかな。」
「もちろん!今から…とか、大丈夫ですか?」
「いいよ。この近く?」
部屋の掃除は奇跡的に昨日済ませていた。よし!俺、さすが!
「はい!直ぐ近くです。」
「ああ、じゃあ俺の家からも近いんだ。待って、自転車で来たから取ってくる。」
能戸さんの後をついて駐輪場へお供する。俺の部屋に彼が来て宿題を手伝ってくれるって…夢みたいだ。すごくないか、2回目の出会いで部屋に連れ込む事に成功するとか…いやいや、男同士だから連れ込むって変だな。
ま、いっか。深く考えない。じゃないと、とんでもない事に気付きそうだ。この胸のドキドキの正体はまだハッキリさせたくない。ギリギリで踏み止まっていなくちゃ。
だって、相手は男だ。
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