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トリカイの冬休み(6)
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冬休みが明けて学校が始まった。俺は能戸さんとはあの1回きりしか会ってない。電話は自分からはしなかったし、掛かってもこなかった。やっぱりなーって感じだ。
「お、加賀先輩だ!今日もカッケェ!」
友達の1人が二階の窓から身を乗り出して、俺の隣ではしゃぐ。朝からうるさい。何を好き好んで男の先輩とか見てんのか…。いや俺も人の事は言えねえな、いつも能戸さんの姿を探してしまう。
「鳥海、お前も見てみろって!本当カッケェから!たぶん身長とか体型とかお前と同じだと思うんだよな、何が違えばこうも差が出んのか、」
ジロジロと、窓際の自分の席に座ってる俺の事を見てくる。
「はあ?俺もカッケェっての!」
「いやいや、ちゃんと先輩を見てみろ!」
「んだよ、どれだよその先輩って。」
「ほら、校門を今くぐって2人で歩いてる…その身長が高い方。」
友達の指差す2人組を見る。うん?あれって、身長の低い方って能戸さん…。表情はよく分かんないけど、そのカッケェ加賀さんと仲が良いんだな。
「うーん、」
嫌な予感。俺と同じくらいの身長、体型。それで、仲良さげな雰囲気。もしかして、能戸さんの好きな人ってこの先輩だったりすんのかな。
「な、カッケェだろー。」
「いや、俺は視力悪いから良く分かんね。」
「あーそうだよな。じゃあ、今度廊下とかで見かけたら教えるわ。」
「や、いいわ。興味ねえから。」
で、俺の嫌な予感が的中してる事を知ったのは4月。能戸さんは3年生になり、俺は2年生になったある日のこと。
「能戸さんっ。」
学校の休み時間、1人で歩いてる彼を捕まえた。人に聴かれない様に空き教室の前で話す。
「本当に、もう一度だけで良いんです。」
能戸さんと寝たのはあの1回きりだ。俺は男が好きな訳じゃない、だけど彼は特別で…もう一度それで終わりにしようって決めてた。なのに断られてみっともなく縋ってる。
「…しつこい、」
ふと彼が口を噤む。俺の後ろの方を見て口の端を上げる。鬱陶しそうな顔から楽しそうな表情に変わった。
俺の後ろに据えた視線のまま歩き出して階段を下りろうとしてた男子生徒を捕まえ、俺の前に引っ張って来た。
「今までずっと黙ってて悪かったんだけど…、」
神妙な面持ち。隣の男子生徒、いや加賀さんを指差す。
「この顔を基準にしてくれる?俺ってすっごい面食いなんだ。あと性格も、わがままで自分勝手で簡単には落とせない方が好きだから。」
「えっ、何言ってるんだお前、」
ぎょっとしてる加賀さん。何だよ、やっぱりそうなんだ…俺はこの人の身代わりだったんだ。とっさには言葉も出ない。
「だから、もうヤらない。好みじゃないから。」
「……分かりました。でも、加賀さんを超えたらいいんですね。…頑張ってみます!」
じろじろと加賀さんを見る。身長と体型は同じくらい。でも顔がなー、…本当にかっこいい男だ。超えられるなんて思ってない、何とか雰囲気だけでも近付いて俺の本気を見せないと。
「…そう?じゃあ頑張ってみて。」
「はいっ!」
これで少しはチャンスがある。もう、好きになって貰えなくてもいいんだ。もう一度だけ身体を重ねて貰えるだけで、それだけでいい。
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