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トリカイの冬休み(10)
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「それでな、危ねぇからトリカイを家まで送ってく。だから楓は先に帰っていーよ、宿題とか大変だろ?」
校門で待ち合わせている楓の前に立った桜井さんが説明している。いやいや、確かにM学は宿題多いけど楓なら大丈夫。それよりも…ぼやけてる視界、楓の表情が分からん、怒ってるか?嫌な顔してねえか?
「…ねえ、それなら俺が送ろうか?鳥海の家は知ってるし、割と近いよ。」
背後から声を掛けられた。いつの間に来てたのか。…校門で合流した時は居なかったから油断してた。
以前はたまに楓や紅葉と一緒に帰ってたりもしたけど、冬休みが明けてからは徹底して別行動で帰ってる。こんなに近くで彼の声を聞くのは久し振りだった。
「いえ、1人で大丈夫なので…。加賀さん、荷物持って貰って有難うございました。桜井さんも、誘導して貰って済みません。助かりました。」
加賀さんの方へ手を差し伸べて、鞄を渡してもらう。人の輪郭を避けながら歩き出す、幾らも進まないうちに左右から腕を掴まれた、
「鳥海、送るって。そんな足取りじゃ電柱にぶつかるか、犬のう◯こ踏んで後悔する羽目になるよ。」
左から能戸さん、恐ろしい。
「渉、紅葉と約束があっただろ。今日は早く帰ってくるからうちで待ってたら?僕が手を引いてやる、勿論うん◯も避ける。」
右から楓、だから何で…。
「…そういや、紅葉と約束してたの忘れてた。楓、手を繋ぐのは恥ずかしいから服を掴ませて、」
犬の排泄物は置いといて、思わぬ助け舟。約束なんて無いけどそれに乗る事にした。右手で楓のブレザーを掴むと、なら任せると言ってあっさり能戸さんの手が離れて行く。その事に安堵して詰めていた息を吐いた。
駄目だな。まだつい意識してる。能戸さんは何のこだわりもなくて全然普通の態度なのに…。
「あれ、そうだったんだ。なら3人で一緒にうちへ行こう。今日はオレが晩ご飯作るからトリカイも食べてけよ。」
「あ、はい。有難うございます。」
よし、後で親に事情を話して迎えに来て貰おう。それまで桜井家に居させて貰えばいいや。
「はい、あーん。」
いや、いやいや…あーんじゃねえよ!
「ちょ、1人で食うか…ブ、」
ふわふわ卵のオムライスを口に突っ込まれた。ちゃんと冷ましてあったのは有難い、それに桜井さんの手料理は美味い。でも、何だこれ。
「トリカイ美味いか?今日はホワイトソース掛けなんだ。マッシュルームとコーン入り!」
うん、マッシュルームとコーンが入ってる。きっと桜井さんはキラキラの目で俺のコメントを待ってる筈、柴犬みたいでかわいいんだよな、今見えないけど、
「はい、ふわとろで美味しいです。ホワイトソースもマッシュルームも大好きですよ。」
「そう、兄ちゃんのオムライスってふわとろ。美味いんだよね。有難う兄ちゃん、」
テーブルを挟んだ俺の向かい側、楓の頭が動く、隣の桜井さんの顔の輪郭に寄り添った。たぶん、頬にキスしてんだろ。ぼやけて良く分かんねえ。
「ほら渉。こっち向いて、あーん。」
隣から第2弾、紅葉の必殺技あーんが来た。
「いや、自分で食う、っ」
また突っ込まれた。もぐもぐ咀嚼する、吐き出す訳にもいかねーし。
「ソース付いてる。」
指先が口許に触れる、軽く拭って離れた。そのまま指が紅葉の口に消えた…ように見えた。いや、気のせいかも?これは願望なのか?いや、何の願望だ。
もんもんとしながら、あーんの合図で口を開ける。もう諦めた、たまには世話になるのもいいかと恥を捨て腹を括った。
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