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No.87/モテ男
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「…これって…チョコ?」
俺の靴箱に突っ込みきれずに溢れ出して落ちそうになってるチョコレートを見て、呆然としてる真琴。
「ああっ、クソ。毎年毎年何の嫌がらせだよ、マジで上靴取れねえ。」
取り敢えず、カラフルな箱の塊を掴んで引き出す。どうすっかな、これ。去年は全部ゴミ箱に捨てた。でも今年は真琴が見てる…捨てたら怒るか?いや、かと言って素直に受け取るのもどんなもんか。
「あ、そっかバレンタインか。」
「…だな、」
そして俺の誕生日でもある。でも真琴にしか言ってねえ。だから当然、今日はバレンタインのチョコレートが幅を利かせて我が物顔で横行してる。
「そだ、これ使うか?」
真琴が自分の鞄をゴソゴソして、マイエコバッグを取り出した。確か、紅葉からの去年のクリスマスプレゼント、柴犬のプリント柄のヤツ。
「…おう、有難う。」
何かあっさりしてんなあ。仮にも彼氏が知らねえ女からチョコレートをわんさか貰ってるのに、エコバッグ貸すとか…。
ちょっとは嫉妬してくれよ。こんな欲しくもねえチョコレートよりさ、真琴に誕生日を祝って欲しい。センター試験は終わったけど、まだ前期日程試験が控えている。俺に自由はない、当然今日も松田さんが来る。ていうか、試験の前日まで毎日来る予定。
「すげえな、こんなにたくさんのチョコ貰ってるヤツ見んの初めてだ。」
「…お前の弟も似たようなもんだろ。」
癪に触るがあいつらはモテる。しかも2人も居るんだから俺の倍はあるだろう。
「ううん、M学はそういうプレゼント絡みのイベント禁止って校則なんだって。だから母さんがくれるチョコくらいかなあ。」
「へえ…。」
うちの学校も禁止にすりゃいい。クソッ、ただでさえ寝不足でクラクラすんのに…無心だ、無心で取り除く。全てのチョコをエコバッグに詰め、待っててくれた真琴と教室へ向かった。
「お、2人共おっはよー。」
「おはよう、龍壱。」
「お早う。」
何だよ、原がニヤニヤしてる。
「さすが、おモテになりますなぁ旦那。」
「京平、エコバッグもう一個貸すな。さすがモテ男、」
楓からのクリスマスプレゼントのビーグル犬柄のバッグを取り出す真琴の視線を辿る、俺の机の上や中にカラフルな箱が…。いや、溢れ出して椅子の上にも置かれてる。何か、去年よりも増えてね?
「…あー、うん。」
嫉妬…は、もう諦める。せめて一言でいい、俺にとっては今日は誕生日なんだ。別に今までそんなにこだわってた訳じゃない。たかが誕生日だって思ってたし。
真琴が袋に入れるのを手伝ってくれる。近くにある真琴の顔、
「誕生日おめでとう。あのな、京平の弁当も作ってきたから昼休みに2人で食べよう。誕生日のお祝いは試験が全部終わってから、ゆっくりやろうな。」
小さい声で囁く。俺が他のヤツに誕生日を知られたくないって言ってたの覚えてたんだな。
「有難う。その時は真琴の誕生日も一緒に祝おう。」
「うん。」
はにかんだような笑顔がかわいい。心の中のモヤモヤはやっと治まった。
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