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君の話を聴こうか、[プリンゲーム]
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新しい母親は、よくプリンを買って来る。それが新しい兄の好物だと知るのに、然程時間はかからなかった。
兄は一つ年上で、中学3年生。受験生だという事もあり転校はせずに、電車を使って以前の校区の中学へ通った。
僕と紅葉は私立のM学園という、中高一貫教育の学校へ通っている。どうやら父親は、真琴を高等部からM学園に通わせたいと思っているみたいだ。だけど、M学は割と偏差値が高い。スポーツ推薦以外で高校からの編入となると、それなりの学力が求められる。
いや、無理だろ。
それが、僕達双子の見解だ。成績なんて知らないけど、どう見ても馬鹿っぽい。
しかも、最近は奴のプリンをどっちがせしめるかというゲームを紅葉とやってる。やり方は簡単で単純。
真琴は電車通学の為、僕達よりも帰宅が遅い。家族の中では、僕達が一番早く帰って来るから、プリンがおやつの時は奴を待つ。
ただいまあ。
今日も、明るく悩みのない笑顔で帰宅した奴を、僕達も笑顔で迎える。
おかえり、兄ちゃん。
おかえり、兄ちゃん。
揃えた様に声が出る。ちゃんと望み通り、兄ちゃんと呼んでやっている。これで表向きは円満な兄弟だ。
今日はプリンがおやつだよ。
プリンが大好物だと滲ませる声音で紅葉が言う。僕も隣で同じ様に言った、
待ってたんだ。プリン一緒に食べよう。
うん。
真琴は素直に頷くと、鞄を置きに二階の自室へ行った。私服に着替えて降りてくる。僕達は3人分のプリンを用意して席に着く、僕の隣に真琴が座る、その向かい側が紅葉だ。それが兄弟の定位置。
いただきます。
手を合わせる。真琴はゆっくりと蓋をペリペリ剥がし、のんびりしてる。僕と紅葉は競う様にパッと蓋を剥がして、パクパク食べた。実際に、競っている。この勝負に勝てば、プリンが2個になるからだ。
わ、美味しそう。
やっとスプーンを持った真琴。今日は、紅葉より僕が早かった、食べ終えた空をテーブルに置く。
兄ちゃん、良いなあ。
なるべく物欲しそうに言う。それがコツ。別に、プリンが大好物という訳じゃない。そういうゲームってだけの話。
もう、食べたのか?楓は早いなあ…。
うん。お腹空いてたから。でも、まだ食べたい。
じっと、真琴のプリンを見る。そうすると、馬鹿な真琴は僕の顔と自分のプリンを交互に見て、名残惜しそうに僕の方へ差し出した。
食べていいよ。
本当はプリンが大好きなくせに、兄ちゃんだからそうするのが当然だと思い込んで渡してくる。遠慮なく受け取って、
わあ、兄ちゃん。ありがとう。
そう言ってやれば、途端に笑顔になる。本当に簡単で単純。やっぱり馬鹿なんだろう。
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