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君の話を聴こうか、[ハンバーグ]
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新しい家族との生活が始まって1カ月を過ぎ、新しい母親を母さんと呼ぶのにも慣れたある日。
今夜は母さんの仕事の都合で帰りが遅くなると連絡があって、電話を受けた僕は紅葉に伝えた。僕達は今まで家事をした事がない。家政婦がいたし、父親も元母親も、勉強を優先しろとしか言わなかった。
どうする?何か適当に作って食べてねって言われたよ。僕、料理作れないけど。
それは、僕も同じ。
だよなって思う。困った。こうなったら近所のコンビニへ行って何か買ってくるしかないかと話していたら、真琴が帰って来た。僕達はおかえりと出迎える。
僕達に出来ないんだから、こいつも何も作れないに違いない。いかにも不器用そうだ。馬鹿だし。
今日、母さん仕事で帰りが遅くなるって。
紅葉が言うと、奴は首を傾げて何かを考えている。本当、とろくさい。脳への伝達が相当遅い。
んじゃあ、何が食べたい?オレが出来るのだったら作るな。
え?作れるの?
紅葉がびっくりしてる。同じく僕もびっくりした。真琴が頷いて答える。
うん。ちょっとだけ。そんな、美味くねえかもしれないけど。
僕達は駄目元でハンバーグをリクエストした。宿題を早々に終えていた僕達は、テレビを見ながら期待もせず待つ。キッチンから良い匂いが漂って来た。
お待たせ。出来たぞー。
呼ばれて、席に着く。いただきますと、3人で手を合わせる。
大きなハンバーグにチーズが乗って、デミグラスソースがかかってる。端にはプチトマトとブロッコリー。彩りも良くて、見た目は完璧なハンバーグ。中々やるなと、一口大に切り取り口へ入れた。
!!
とんでもなく美味かった。びっくりした。こんな才能を隠し持ってやがったとは!
思わず斜め前の席を見た、紅葉も同じタイミングでこっちを見た。
美味い!これ、めっちゃ美味い!
言葉にしてないけど、分かった。目を合わせたまま頷いた、向こうも頷く。
なあ、どう?美味いか?不味かったらごめんなぁ…。
真琴は僕と紅葉を交互に見て、不安そうにしてる。何でこんな上手く作ってるのに、そんな自信なさそうな顔すんの。いつもみたいに、馬鹿っぽい笑顔で聞けよ。
美味いよ兄ちゃん。本当にすごく美味い。
紅葉が笑顔で言った。あ…先を越された。そう思った。
本当に?…良かった。
おずおずと言って、向かい側へ真琴が微笑んだ。それは、照れた様な、はにかんだ笑顔だった。その横顔が…かわいいと思った。そして悔しかった。僕だって美味いって思った、紅葉よりも先に言ってたら、そしたら…。
ハッとした、奴から紅葉の方へ視線を動かす。紅葉が優しい笑みを浮かべて、真っ直ぐ真琴だけを見ている。僕の事なんて、気にもしてない。
ああ、やっぱりそうか…。
僕には分かる。大抵、好きになる子は同じ。そして、いつも紅葉の方がその感情を素直に出す。僕はいつも、一歩出遅れてしまう。対人関係においては、紅葉の方が得意分野なんだ。
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