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君の話を聴こうか、[習慣]
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真琴は起きるのが早い。寝るのも早い。しかも、寝起きも寝付きもすこぶる良い。
僕は欠伸をしながら、ほぼ同時に起きた紅葉と一緒に、既に制服へと着替えを済ませて顔を洗っている真琴を挟んだ。
兄ちゃん、おはよう。
兄ちゃん、おはよう。
ぎゅーっと、両側から抱きしめる。
う、わ、わ。
驚いて、顔を拭いたタオルを握りしめてる。かわいい。
びっくりしたぁ、…楓も紅葉も、おはよう。
真琴はちゃんと楓と言った時は僕を見て、紅葉と言った時は紅葉を見る。
思えば真琴は、僕達の見分けに失敗した事がなかった。とろくて馬鹿っぽいとか思って、意地悪ばかりしてた時だって、ちゃんと名前を呼んでくれてた…そんな事に今頃気付くとか…。本当の馬鹿は僕だ。
兄ちゃん、今日も一緒に勉強しようね。
兄ちゃん、おやつも一緒に食べよう。
だから、寄り道しないで帰って来てねって2人で頼む。
もうプリンゲームはやってない、勉強も仲良く一緒にしてる。狼野郎の時に嘘をついたけど、本当は高一の数学の範囲に進んでいるから、偶につまづく真琴に教えながら宿題をやる。2人ともホント頭いいんだなぁって、真琴は屈託無く笑う。変なプライドの高さとか全然無くて、勉強を教えたら素直にありがとうって言ってくれる。
真琴は顔を洗う僕らに場所を譲って、後ろでのんびりと髪をとき始めた。さっさと顔を洗い終えた僕は、その手から櫛を取って代わりにといてやる。
わ、楓。大丈夫だから、自分で出来るし、
兄ちゃんの髪はサラサラだ、綺麗だね。
そう言ったら真琴は恥ずかしそうな顔をした。真琴は自己評価が低い。成績も良いのに、自分ではそう思っていない。容姿を褒められる事にも慣れてなくて、もじもじとしてしまう。とにかく僕にとっては、その全てがかわいい。
ずるい。僕も、僕もやりたい!
紅葉が僕の手から櫛を奪おうとする。さっとかわして、言ってやった。
明日、やればいいだろ。
そっか。なら、明日は僕がやる。
えっ、えと、
戸惑う真琴を挟んで頷き合う。決定。櫛を洗面台の棚に戻して、真琴の右手を握る。左手は紅葉が握った。
ほら、兄ちゃん朝ご飯食べに行こう。
今日は何だろうね。パンかなぁ、ご飯かなぁ。
う、うん。
真琴は僕と紅葉の顔を見て、自分の握られた手を見て…、戸惑いが表情に出ている。まあ、そうだよな。今まで、お互いに適度な距離を置いて接してたし…。
でも、今日からはその距離をなくすんだ。そうじゃないと先に進めない。紅葉とも手を組んでる。
事ある毎に2人で体に触れる、家族なんだから当たり前って顔して。ソファーでくつろぐ時も真琴を挟んでぴったりくっ付く、手が空いてる時は手を握る。サラサラの髪を撫でる。僕達に触れられる事を習慣付けた。僕の作戦は順調に進み、真琴との距離感はどんどん縮まる。
最初は驚いていた真琴も、一週間もすれば当たり前だと認識し始めた。10日ほど経った時には、自然と受け入れている。二週間目にはソファーに座る時も、自然と両端を空けて僕達のスペースを置いて座ってる。腰を抱いても、逃げもしない。試しに兄ちゃんかわいいって髪にキスしてみた。くすぐったそうに笑ってる。全く嫌悪感など感じていない。
人間とは、慣れる生き物だ。しかも好意がある者に対しては許容範囲が広くなる。
もう、そろそろかな。
紅葉を見る。頷く。
なら、次のステップへ進もうか。
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