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君の話を聴こうか、[卒業]
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早い事に3月、加賀はK大学に合格した。しかも能戸さんも同じK大学って、ぜんぜん知らなかったから紅葉に聞いて驚く。
今日は真琴の卒業式。残念ながら僕達の学校は、別の日に既に卒業式を終えていて、通常通りの授業があり見に行けない。父さんがビデオで撮影するとか言ってたから、後で真琴の勇姿を見るつもり。
うう…緊張する…。
案の定、首席で卒業の真琴は代表で答辞を読む。それで朝から腹を抑えて顔色が悪い。何でも緊張で痛むんだとか…。
兄ちゃん、伊達眼鏡掛ける?
紅葉がまたあの変な眼鏡を持って来た。もう卒業なんだしそれは止めてくれ。入学式の後、両親に怒られただろ!
ううん、大丈夫…。
真琴がよろよろと学校の鞄に手を伸ばして、中から何かを掴んだ。あ、初詣で加賀が真琴の為に買ったお守りだ。確か、健康第一的なやつ。真琴は、直ぐ無理するからとか何とか言ってた。
これ持つと、落ち着くから。
真琴が微笑む。代わりに真琴は、学業成就のお守りを渡してた。本当、順調に2人の交際は続いている。
その間の僕はというと、能戸さんに強請られ、というか半強制的に学業成就のお守りを買わされた。そして、僕の手には能戸さんから貰った恋愛成就のお守り。本当疲れる…あの人何なんだ。
そっか。じゃあ僕達は行けないけど、兄ちゃん頑張って。きっと大丈夫。
帰ったら卒業祝いの食事会だよ。大丈夫、兄ちゃんならやれる。
僕達が励ますと、あの晴れ渡る青空の様な笑顔になる。ああ、その笑顔さえあれば、それだけできっと大丈夫。これからの真琴の未来は明るい。それは、真琴の気持ちがそう在るからだ、側に居れば分かる。
だから、さようなら真琴への恋心。これからは、大好きな兄ちゃんとして、家族として側に居る。僕の思いも、今日で卒業。
楓、辛い時は僕に何でも言って。
紅葉、それはお互い様。
M学園のバスが停車する集合場所へ二人で歩く。目を合わせる、頷く。僕には紅葉が、紅葉には僕が居る。同じ傷を持ってる。
だけど…、僕達にはきっと他の存在が必要なんだ。今度は別々の人を好きになりたい。共有なんて馬鹿な事はしない。
大丈夫。その時まで支えるから。
分かってる。僕も同じ。
来月から、僕達は高3だ。高校最後の1年、そして受験生。本当に愚かだった高2までの僕を少しでも変えられるだろうか……それでもきっとまだ愚かで、日々を悩んで葛藤して、前に進むんだろう。
それでいい。いつか、この想いの傷痕を癒してくれる人を、そして癒してあげたいと思える人を見付けられたら…。そしたら、僕は愚かな自分を許せるだろうか。
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