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君の話を聴こうか、[ピアス]
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懸念していた能戸さんは、意外にも大人しく先に帰ってくれた。僕は内心ほっとしながら、兄ちゃんと2人で小雨の中を帰宅した。
いつものように、寝る前に紅葉の部屋を訪ねる。今日のバイト内容の報告と、明日の事を話し合わないと。
「明日は、須田さんの家で一緒に受験勉強する約束したんだ。午後からなんだけど、」
そう言ったら、ちょっと驚いた顔をして頷く。まさか彼女の誘いを、こんなに早く受けるとは思ってなかったんだろう。
「それで、…僕が行っても良いのか気になって。紅葉は須田さんの事をどう思う?」
もし、須田さんに対して好意があるなら、この役を譲ろうと思っている。紅葉も僕と同じでまだフリーだし。
「どうって…。まあ、可愛いけど。でも僕は他に気になる人がいるし、楓が行って。」
「ああ、…もしかしたら能戸さん?」
「え…何で?」
「今日、須田さんの誘いを受けたら、それを聞いてた能戸さんに絡まれたから。ひょっとしたら僕を紅葉だって思ってるんじゃないかな、」
だとしたら、紅葉と能戸さんってそんな関係なのか。紅葉と能戸さんは2人で会ってる事もあるし、彼はバイだし…。想像し始めたら、本当にそんな気がして来た。
元々僕と紅葉は、女の子の方が好きなノーマル。でも真琴と出会ってからは…、今は正直よく分からない。好きになる対象の性別とか、関係なくなってるのかもしれない。僕らは真琴にのめり込むあまり、その垣根を容易く越えてしまった。
「……それって、」
紅葉は何かを考える様に、直ぐに口を閉じた、
「ごめん、変な事言った。気にしないで良いから。じゃあ、明日は僕が行くから。おやすみ。」
「うん。おやすみ。」
紅葉の部屋を出て自室へ戻ると、須田さんから届いていた待ち合わせのメールに、早速返信した。
「楓君。」
駅から出たら、時間前なのに彼女は既に待ち合わせ場所に立っていた。手を振って来るのに、振り返しながら、時間に遅刻をしない子なんだなって思った。彼女はショートパンツと、ひらひらした可愛い服を着ている。
「須田さん、待たせたみたいでごめん。今日は雨が降ってなくて良かった。」
「うん、ちょっと曇ってるけどね。あ、うちはこっちだよ。」
彼女が歩く度に、ハート型にカットされたピンクのストーンがキラキラ揺れる。
「ピアス、昨日と違うね。」
「えっ、うん!スゴイね、気付いてくれたんだ。ふふ、嬉しい。」
笑顔が可愛い。バイトの時は結んでいる髪は下され、緩く螺旋を描きふわふわと動く。女の子だなぁ。
兄ちゃんとは全然違う、…駄目だ、比べる対象にするべきじゃない。大丈夫、分かっている。
須田さんの歩幅に合わせて歩く、1人で歩くよりもゆっくり。でも嫌だとは思わない。
「ここだよ。」
確かに、バイト先に近い住宅街の一角。割と新しい一軒家だった。お邪魔しますと声をかけるけど、中から返事はない。2階にある彼女の部屋に案内される、女の子の部屋に入るのも久し振りだ。
「今日は親が居ないから、気にしないでゆっくりしてね。飲み物持ってくる、ホットコーヒーでもいい?」
「うん、ありがとう。」
僕は柔らかな淡いピンク色のラグに座り、勉強道具をショルダーバッグから出した、丸くて白いテーブルの上へ置く。念の為に持って来ていた参考書も出す。後は、自分の勉強の為に持って来ている問題集。
はぁ…。
溜め息が出る。最近、進路を悩み始めている。今迄は、K大学を受験して大学院へ進学し、弁護士になるつもりでいた。
弁護士を目指すのは変わらない。だけど、大学を変えようかと思っている。まだ誰にも言ってないけど、東京の大学へ行こうかって考えてる。これも、バイトを辞めたい最後の理由だ。ゆっくり、考える時間が欲しい。
「楓君、お待たせ。」
コーヒーの香り。僕と紅葉はブラックしか飲まない。彼女はバイト先でそれを見てるから、ちゃんと分かっている。僕の前にはブラック、彼女の前にはミルクの入ったコーヒー。
「有難う。」
「ううん、インスタントでごめんね。バイト先のに比べると美味しくないと思うけど、」
「いや、うちでもインスタントだし。僕はコーヒーに拘りとか無いから。」
「良かった。私もなんだ、」
彼女が笑うと、ピンク色のハートがキラリと揺れた。
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