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君の話を聴こうか、[憧れ]
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筒井の部屋は広い。さすが医者の息子で一人っ子。二階は全て彼の部屋で、うちが3人で分けてる空間を独り占めしている感じだ。
「筒井、ここ嫌なんだけど。」
ベッドの横に用意して貰ったシングルの布団を見て、ダブルサイズの広々としたベッドを見た。先週も、先々週も、このシングルの布団からベッドを見上げていた。
「何、俺に譲れって言ってんのか、」
「まさか、僕も隣に入れてって話。」
ベッドの上で半身を起こした姿勢の筒井が読みかけの本を持ったまま、こっちを見て呆れた顔をする。
「楓、お前は客だろ。遠慮を知らないのか、」
「知ってる。だから先週、先々週と我慢しただろ。」
「それで?今日は我慢出来ない訳?」
「うん。そもそも僕はベッド派だし、筒井のベッドは広いだろ。それに、一番の理由はシマダがそこで寝てるって事。」
また呆れた顔をされた。
「猫と一緒に寝るの、子供の頃からの憧れなんだ。」
「…入れば、」
筒井が端に寄り場所を空けてくれる。なんだかんだ言っても、いい奴。
「有難う。」
空いた場所に借りた枕を置くと、シマダも少し移動して場所を詰めた。ベッドに入れば、シマダと目が合う。枕と枕の間に丸まった体がすっぽりとはまってる。
「シマダ、一緒に寝ような。」
ベッドに寝そべり猫の狭い額を撫でる。目を閉じたまま、勝手にすればと僕の指先を甘受してる。そのちょっと突き放す感じがたまらない、さすが美猫。メスだから、男心を惹くのが上手いのかも。
「猫、いいな。僕も大学生になったら飼おうかな、でもペットOKの物件とか高そうだなぁ。」
「一人暮らしするのか、K大学は自宅から通える距離だろ。」
「…そうだな。」
まだ、進学先の事を親に言ってない。遠方にするのなら物件探しもしないといけないし、早目に相談するべきだ。でも、それが分かっているのに…。
シマダの背中の縞模様を指で辿って尻尾の付け根で一旦止まる、体に沿う長い尾の先まで縞模様が続くのを見た。交互に繰り返す灰色と黒、最後は黒で終わり。
「今日は紅葉と話してたな。」
本に目を向けたまま言ってくる。シマダの背中から移動して美脚の縞々を指で辿りながら答えた。
「うん。心配してたのか?」
「まあまあ。」
「まあまあって何だよ。そこは心配してたって言ってくれないと、」
「心配してたよ。」
「ははっ、筒井が素直過ぎて怖い。」
「本当、勝手な奴だな。」
「ごめん、ごめん、」
筒井が心配してくれてたのが何かくすぐったい。僕は、この友人と兄弟から離れて全く新しい環境に身を置く事を本当に望んでいるのか?今、また迷い始めている。
そういや、進学先をK大学にしろって脅されたんだった。結局あれって何だったのか…。あのやり取りに意味なんて無いのかも、結局ヤりたかっただけなんだろ。
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