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君の話を聴こうか、[柑橘系]
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やっぱりと言うか能戸さんは懲りもせず、あんな事をした翌日にも普通にコンビニへやって来た。
「能戸さん、」
「あれ、楓。」
彼を待ち構えていた僕は、入って来たところを捕まえてアイスコーナーに連れて行く。
今日はスクールバスを待たずに電車に乗り、バイトの紅葉と途中で別れて帰って来ていた。
「残念、紅葉だよ。」
親しげに、にっこり笑って嘘つく。あまりにも一瞬で僕の名前を言ったから、本当に見分けてるのか試したくなった。
僕の顔を見上げている能戸さんの長い睫毛が瞳に掛かる、唇が横に引かれ優しそうな微笑みを浮かべた。
「何、試してんの?可愛いな楓。」
「チッ、引っかかんねえか。間違ったらアイス奢らせるつもりだったのに、」
「アイス…あ、昨日買いそびれたやつか。どれ?買ってやる。」
何だ、反省してんのかな。
「でも昨日食べたかったのは既に奢って貰ったんだ。だから、今日は別のにする。」
「ふうん…、島田に?」
僕の方を一切見ないでアイスを物色してる。でも声がさ、尖ってるし冷たい。
「違う。紅葉に、」
「ならいい、」
素っ気ない返事だけど、いつも通りの口調。僕は、いつの間にこの人の声色まで気に掛けるようになったんだろ。
「これ、お勧め。」
「オレンジシャーベット…。」
あれ…まさか、知ってる?
能戸さんお勧めのオレンジシャーベットを買って貰ってコンビニを出た。能戸さんはソーダ味のアイス。食べながら家路を辿る。
「あ、美味いコレ、」
僕は柑橘系が好きだ。そこは紅葉と違う点。
「だろ。」
口調が柔らかい、満足そうに口の端が少し上がる。その横顔を見下ろす僕の視線を感じたのか、彼がアイスを咥えたまま顔を上げた。
「あのさ…シマダは金とか持って無いし、僕の友達の家に住んでるんだ。」
「それってヒモだろ。何が良いわけ?」
「触り心地が最高だし癒されるし、見た目が好み。ついつい会いたくなっちゃうんだよね。」
「友達のヒモに随分と入れ込んでんだな。」
あー…不機嫌そう。
「耳と尻尾の先がちょっとだけ黒くて体は灰色と黒の縞模様。だから、縞模様だって言葉を転じてシマダ。ちなみに美人なメス猫。」
彼は無言で驚いた顔をした。
「で、謝る気になった?」
「…まあね。」
でも、一言も謝ってない。まあいいや。溶け始めたアイスを急いで食べる。果汁をたくさん使ったオレンジの香りと酸味、僕好みの味。
たまたま彼も柑橘系好きなのか、もしくは僕の好みを知ってて勧めてくれたのか。それともその両方か。さて、どれだろう。
「能戸さん、柑橘系好きなんですか?」
「うん。楓程じゃないけど、」
両方か。やばいな、顔がにやけるのは何でだろ。
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