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君の話を聴こうか、[渉]
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夏休み最初の日曜日の午後。
「お邪魔します。楓久し振り。元気だった?」
宿題を持参して来た渉の笑顔。僕と紅葉もほぼ終わらせている宿題を用意して待っていた。
「うん、久し振り。」
渉は相変わらず兄ちゃんと同じくらいの身長と体型。高2の終わりに眼鏡を壊してからはコンタクトに変えていて、案外くっきりとした二重の瞳が目立つ様になった。
「暑いから早く僕の部屋に行こう。クーラーつけといたよ。」
紅葉に促されて3人で暑い2階へ上がる。避難するように紅葉の部屋に入る、うん、涼しい。
「ごめんな、いつも頼っちゃって。宿題が学校のと塾ので…もう大変で頭破裂寸前。」
夏期講習で塾に通い始めた渉は、苦笑いしながらテーブルの上に宿題を出した。結構な量の問題集。
「僕はバイトも無いし、暇してるから言ってくれたら勉強とか付き合うよ。」
「僕もバイトの無い日は大丈夫だよ、」
僕達は、渉が頑張っているのを知っているから協力は惜しまない。
「本当、それ助かるわ。去年から2人のおかげで成績伸びてるから、親の期待も大きくなっちゃってさ。ねーちゃんが私立だから俺は国公立じゃないと進学難しいし、それに2人と同じとこ行きたいから。」
そう言って笑う。家庭の経済的事情もあって、彼の進学希望先は一番近い国立大学のK大学だ。そう、能戸さんと同じ大学…その事をどう思ってるんだろ。紅葉は相変わらずK大学希望だし、僕はまだ断言出来ない。
早速宿題に取り掛かる、僕は考え事をしながら紅葉が渉の分からないところを教えているのを見ていた。
違和感を感じる、何か距離が近い?僕が会ってない間も、紅葉は渉の塾が無い日に合わせてバイトのシフトを調整して会いに行っていた。それというのも、兄ちゃんの店長問題が一応の終結を迎えたおかげだ。
何でも店長の彼女が妊娠して結婚するとか、紅葉の話しでは未来の赤ちゃんに夢中になっているらしい。これで暫くは大丈夫だろう、というか彼女居るなら軽い気持ちで兄ちゃんに惹かれないで欲しい。
じっと見ている僕に気付いた紅葉の視線が上がる、目が合った。チラリと渉の事を優しい眼差しで見て、もう一度僕に目を向ける。
あ、そういう事。
そ、そういう事。
頷き合う。やっと理解した、紅葉が好きなのは渉だ。成る程な…僕が色々悩んで自暴自棄になっている時に周りも色んな動きをしていたんだ。そんな当然の事に思い至った。
「渉は紅葉の気持ちを知ってるのか?」
渉が帰った後に、まだ紅葉の部屋に居た僕は気になっていた事を聞く。そんな事ばかり気にしてろくに宿題も進んでない。
「まだ言ってない。受験あるし、渉にはK大に受かって欲しいから。」
「そっか…。渉は、K大で本当にいいのかな、」
「…それって、能戸さんの事?」
「うん、」
僕は、渉の気持ちを考えると複雑だ。それで結局、2度の行為後も…しょっちゅう会っていても彼の事は保留中。
「もうきっぱりケリつけたって。もし楓が能戸さんと付き合うとしても、問題ないと思うよ。渉は能戸さんと会っても、無理せずに話せるようになったし、」
「えっ、会ったの?」
「うん、だって渉と図書館で一緒に勉強してると、能戸さんも来るから良く会うよ。」
「ああ、そういえば近所か、」
去年、兄ちゃんと加賀さんと僕達の4人で行った時も居たな。
「そう。それに能戸さんは図書館を良く利用するんだって、渉は平気そうに教えてくれたけど。」
そうだ…彼は読書家。あんな見た目で静かに本読んでたら、みんな騙されそうだなあ。中身がアレなのに。
何だかちょっと見えて来た。もしかしたら、渉は能戸さんと図書館で知り合ったとか?あり得るな。
「楓。自分の気持ちを優先しなよ。」
自分の気持ちを優先って言われても、
「渉の過去の事まで背負って悩むな。楓が渉を友達として気に掛けているのは分かる。でも、それを言い訳にして能戸さんの事を遠ざけるのは駄目だよ。自分が能戸さんを恋愛感情として好きか嫌いか、それだけで判断しなよ。」
「…うん。」
それは、逃げるなって事だ。
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