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友人の恋(1)
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その日、能戸儀一に呼び出された俺は真琴のバイト先であるカフェに向かう事になっていた。
能戸とは同じK大学だが学部が違う。互いに連絡を取らないと、なかなか偶然には会う事がない。共通の友人である東野とは同じ講義を受けていたから、どうせなら誘おうかと離れた所に座っていた奴に帰り際声を掛けた。
「能戸とこの後会うけど、お前も行く?」
「ちょっ加賀、お前こっち来んな。隣に立つな!」
この言いよう。イラッとくんな。
「はっ!俺が隣に立とうが立つまいが、お前の容姿に変化なんてねえだろが。」
「チッ!とにかく、後一週間は寄ってくんな!しかも能戸との約束に俺を巻き込むな!」
最近彼女と上手くいってないらしく、ピリピリしてる。しかも何だか俺が原因の一端らしい。いや、能戸もなんだけど。
「お前の彼女に言っとけ、俺らは二人共すでに付き合ってる奴いるから、何の見込みもないし、目移りして無駄にふらふらすんなって。」
「…わかってるよ。ごめん。」
「いいけど…。お前さあ、もう少し中身を見てから付き合ったら?何度目だよ。」
こいつは彼女を選ぶ基準が容姿重視な上に、俺や能戸目当てで近づく女の罠に容易く引っ掛かる。大学二年の今、既に何度目かの別れを経験していた。しかも、中学の時にも同じ様な事があって俺と東野は絶縁してしまい、真琴と能戸の取りなしで今に至ってる。
だから嫌なんだ、こいつの女問題とかさ。
「…だな。」
「一週間。近付かないでいてやるよ。」
望み通りさっさと離れてやる。で、結局一人で出向く事になった。
ガラス張りの大きな窓越しに能戸を見て、またさっきの出来事を思い出し、腹ただしい思いでカフェに入店する。ひらひら手を振る美貌の主に近付いた。
「お前も東野に拒否られればいいのに。」
言いながら腰を下ろす。
「何、寄って来んなとか言われたの?」
ふっと、口角を上げ意地悪く笑う。あー、こいつ!
「お前の所為でもあんだろ。何で俺一人で東野のうっぷんを受け止めなきゃいけねーんだよ、」
ぶっ!あっはは、と楽しそうに笑う。あーおっかしい、と涙を拭った。
「で、傷付いたの?馬鹿だなあ。あんなのほっときゃ良いのに。」
ちょっと、ほんの少し、いやほとんど感じない程度には傷付いた…気もしなくもない。でも、能戸に見透かされんのは気に入らない。
「傷付くかっての。」
「まあ、そういう事にしておこうか。」
そう言って、カフェオレを口に含む。能戸はやっぱり能戸だ。
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