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「ねぇ、蓮先輩…聞いてます?」
尚の部屋を出て直ぐ、俺と冴は食堂に行った。冴の不機嫌は継続中だ。
まだ夕飯を食べるには少し早く、俺達を合わせても10人程度で、無駄に広い食堂はガラリとしていた。
「んー?何だっけ」
夕ご飯特製焼き魚セットを注文した俺は魚の身を解しながら答える。
どうせ、さっきの事だろう。
食堂に向かうまでの間、ずっと言っていたから。
「高安先の部屋で何があったんですか?」
「何もないよ。来週からテストが始まるから勉強に集中したいって言われただけ」
「ふーん」
あ、やっぱり信じないよね。俺結構動揺してた気がするし。
冴の視線が痛い。凄く凝視されてる。
「早く食べないとオムライス冷めちゃうよ?」
「はーい」
それから黙って黙々とオムライスを食べ始めた冴に、ちょっとホッとした。
あまり聞かないで欲しい。
恋人が出来て、やっと忘れられるって思って…なのに、尚と隼人くんのキスを見て、俺の心には余裕がない。
だからか、ご飯があまり食べれなかった。
大きなオムライスをペロリと平らげ、わぁ…ちっちゃい身体なのに凄いなーなんて思って冴の顔を見たら、口の端にはケチャップがベットリとついていた。
「なんですか?」
「ここ、ケチャップついてる」
自分の口の端を指で差して教えると、にっこり笑って、
「舐め取ってくれますか?」
なんて言うもんだから、飲もうと思って口に持っていったお茶を零してしまった。
冴って、結構大胆な子なのかな。
「ティッシュ持ってるから、それで拭こうか」
お茶をテーブルに戻して、鞄からティッシュを取って冴に渡そうとしたけど、明らかに不満な顔で俺を見るもんだから仕方なく席を立つ。
ティッシュを一枚出して冴の顔に近付け、ケチャップを拭き取ろうとしたら手を掴まれてしまった。
「舌で舐め取ってって言ったじゃないですか。僕達恋人同士なんだから、それくらい普通でしょ?」
「…え、普通、なの?」
「恋人同士なら日常茶飯事ですよ。ほら、取って下さい」
目を閉じる冴に、覚悟してゆっくりと顔を近付ける。
あ、睫毛凄く長い。甘い香りがする。シャンプー何使ってるんだろう。
後もう少しで口がケチャップに届くという所で、掴まれていた手を引っ張られた。
ぷにっとした柔らかい感触に、驚いて目を見開く。
キス、されてしまった。
ちゅっと、小さなリップ音が鳴って、冴の唇が離れていった。
「あ、その…」
どうしよう。
実は、俺にとってこれがファーストキスだ。
「蓮先輩がヘタレだとは思いませんでしたよ。結構色んな人に告白してるって聞いてたから、肉食系だと思っていたんですけどね」
ヘタレ、か。
そうかもしれないね。
好きな相手に告白も出来ず、ビビって他に逃げてるんだから。
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