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空に雨降り、小道を行けば 2
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「穂影…」
震える声で僕の名前を呼ぶ東。
すこしにやりと笑って見つめると、東は少し曇った表情で僕から目をそらした。
東の顔は恥ずかしいのか、ほんのり火照って色ぽっくなっている。
おいしそ…
ほんと、食べちゃいたい。
「いいの…?だめなの…?」
さらに顔を近づけて質問すると、東は少し震えながらこう応えた。
「だめ……」
「え……?」
思わず唖然とした声が漏れる。
なんで……?
昨日は東が忙しくて、できなかったけど、一昨日までは普通にキスだって、エッチだってしてたのに。
混乱している僕を見て、東がゆっくり口を開いた。
「俺さ、昨日見ちゃったんだ」
「何を……?」
昨日……?
色々思い当たる節があり過ぎてわかんない…
えっと、昨日は、朝から千春とじゃれあって、そんで、午前中はずっと寝てて、賢太郎先生に呼び出されて、煙草がばれて、そんで、結衣ちゃんに告白されて……
まさか……
「昨日の放課後、教室で、穂影が桜沢さんと……キスしてるところ。」
東はキスというのが恥ずかしいのか、その部分になると、さらに顔を背けて言葉を発した。
ほんと、こーゆーとこかわいい。
てか……そんなことより……
「みてたんだ……」
そう尋ねると、東は泣きそうな顔でこくんと頷く。
まじか……
てことは、さっきから余所余所しかったのはそのことが気になってたからか………
「……穂影は、女の子の方がいいんだよね。俺や、奏が無理やり付き合おうって言ったから、断れなかったんだよね。穂影、昔から女の子好きだし……桜沢さん、美人だもんね……穂影……ごめん。」
相当悩んでいたのか、堰を切ったように東の思いがあふれ出してくる。
東の純粋な思いが胸を突く。
僕にとってキスなんて、それほど特別な意味なんてない。
でも、東にとっては違うのだろう。
大切な人と結ばれていることを示す行為。
まして、口同士ともなれば東の中では相当に大切なものなのだろう。
「東………」
「ひっく……俺……男の子だから……穂影の事満足させてあげられない。でも……ひっく…東のことすごい好きで……どーしたらいいかわからなくて……」
ついに東から大粒の涙がこぼれ出す。
まずいな……どうしよう…
なんて説明すればいいんだ…
「東……ごめん……でも、勘違いなんだ。」
「……嘘。」
東は、涙で崩れた顔をさらにゆがませる。
「なんで……じゃぁ、なんで桜沢さんとキスしてたの…?俺らだけじゃ満足できなかったから……?」
「あれは……桜沢さんに告白されて、フったんだ。」
その言葉をきいて、東の顔がさらにこわばり、さらに涙があふれ出す。
「ひっく…なんでフってるのにチューするの?」
「桜沢さんが、最後にキスだけしてくれって……それであきらめるからって…」
僕の中では何でもないことだった、エッチじゃなくてキスくらいなら何でもない。
そんな風に思って桜沢さんの『お願い』を受け入れた。
でも、そのことのせいで、東がこんなにも悲しんでいる。
胸が痛む。
昔、遊んでいたころは二股三股してた頃、浮気を問い詰められることはよくあった。
その時は、何が悪いんだといったような気持ちで激昂する恋人を冷たく見ていた。
だけど今は違う。
こんなにも胸が痛い。
「……ごめん東。軽い気持ちだったんだ……これであきらめてくれるならって。東がこんなに傷つくだなんて考えてなかった……もう、こんなことしないから……」
軽率な判断をした自分が憎い…
心から東に謝りたい。
だって、裏切ってしまったから……
「穂影……信じていいんだよね…その言葉」
東の涙で真っ赤に腫れた瞳がまっすぐ僕を見つめてくる。
「うん……絶対裏切らない。」
「…わかった。信じる…だから、だれよりも激しく俺にキスして……?」
そういってゆっくりと目を閉じる東。
どこで覚えてきたのか、そんな殺し文句を吐く東の唇をゆっくり塞ぐ。
東の柔らかな唇は、誰よりも特別な味がした。
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