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四季折の羽:パロディ【物の怪】
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夜空の星も、雪雲に隠れ姿が見えない。
頬にキンとした雪の熱が広がる。
肌に浸透して、身体の感覚が奪われて行く。
目を開けると、人の手がある。力を少し入れてみると拳が開き指が動く。
身体を覆っていた白い羽はどこにもなく、青白くなる人間の肌が俺を覆っている。
「……は、ぁ…」
口を開けば白い息が目の前に広がった。
鉛のように重い体は、“俺”が死んだ事を知らせた。
「……う…」
四年前、人間に命を救われた。
そいつは猟師だった。顔は薄らとしか思い出せない。でも、とても綺麗な顔をしていた。
人の仕掛けた罠に捕まり、もう駄目だと思った。
足に食い込むあの金属の刃はいつまで経っても忘れる事は出来ない。
左足がまだその時の痛みを覚えている。
左足……今、俺の足はあの頃のような骨ばる足ではなかった。
骨を筋肉が覆い、皮膚がそれを包む。
重い人の足が俺に付いていた。
命を救われてからの四年間、俺は自由に生きた。
空を飛び、野山を眺め、沢山寝て、沢山食べた。
そして四年間、あの猟師の事を思いながら生きた。
「……寒い…」
声が出る。四年前とは違う声だ。
人の言葉を喋ってる…。
そうか。俺はもう獣ではないんだ。
俺は今、人間の身体を得た物の怪なんだ。
「………」
人間なんて大嫌いだ。傲慢で残酷な事を平気でする奴等。
山を狩り、動物を狩り、命を狩るあいつらなんか大嫌いだった。
人が見ている世界はきっと血色で、こんな綺麗な世界なんか全然見えていないんだろうな。
人間なんて、奪う事しか考えない醜い生き物だ………
でも、俺は願ってしまったんだ。
生まれ変わるなら、人がいいと。
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