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四季折の羽:パロディ【雪の夜】
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「…ゔ…っ…」
でも、なんて有り様だ。
死ぬ間際にそう願ったら本当に人の身体になって目覚めるとは。
歩く事さえ出来なかった。空を飛ぶ事さえ出来なかった。
人の身体は俺には重過ぎた。
目覚めてどれくらい経っただろうか。
目の前に広がる景色は、四年前ととても良く似ていた。
雪が広がっていて、倒れた体に少しずつ降り積もっていく。
人の身体を手に入れたのに、早々に死んでしまいそうだ。
どこへ行けばいいかもわからない。
これからどうすればいいかもわからない。
翼は有るが、この身体を引き飛ぶ事は出来ない。
冷たい。冷たい空気が重く俺にのしかかる。
ああ。物の怪になっても俺は出会えないのか。
人の姿になれば、あの猟師にもう一度会えると思った。
人の言葉で、一度でいいから礼が言いたかった。
俺があの時の鶴だと言えば、あいつはまた微笑んでくれるだろうか。
それとも、物の怪と知ったら俺をあの猟銃で撃ち殺すだろうか。
あの猟師は、今どこに居るんだろうか。
「……生き…たい…」
口元さえ寒さで動かなくなる中、ポツリとそう呟く。
視界が狭まり、意識が朦朧として来た。
薄まる意識の中で、あの猟師の幻覚が見える。
頬に暖かい感覚がして、全身にその暖かさが広がった。
体がふわりと浮き、あの猟師の声が聞こえる。
優しいあの声を聞くと、自然と涙が零れ落ち、そして俺は、眠りについた。
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