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四季折の羽:パロディ【春の歌】
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朝日が雪を溶かし、鳥達が歌い、春の訪れを知らせた。
山も緑を取り戻しつつある。
縁側に腰を掛け、あの男の帰りを待っていた。
「……腹減った…」
ぎゅるるる、と鳴り止まない腹を抑えていると、地面を踏む足音が聞こえた。
「‼︎」
「ただいま。」
頭を上げると、目の前には木の枝を沢山背中に背負い、俺を見てにこりと笑うあの猟師が立っている。
「お、遅い!どこまで行ってたんだよ!」
「ごめんごめん。乾いた木の枝が中々見つからなくて。」
お前のせいで腹の虫が鳴りっぱなしだ。と怒鳴ってやると、猟師はまたにこりと笑った。
「すぐ飯作ってやるから。待ってろ。」
「ふん。早くしろ。」
そんな猟師から顔を背け、寝転んだ。
目を覚ましたら、あの世だと思っていた。
だけどあの世なんかじゃなくて、俺が目を覚まして居た場所はあの猟師の家の中だった。
背中の羽はどこかへと消えてしまい、与えられた人の体は月日が経つ内にだんだんと馴染んでいった。
「新。魚と猪どっちがいい?」
「魚。」
「わかった。」
飯は何がいいかと聞かれ、素っ気なくそう返してやった。
でも、いつも返事をした後後悔する。
本当はもっと素直に言いたいのに。もっと優しく言いたいのに。
俺だってこいつに何かしてやりたいのに。
でも心に反して言葉は強く口に出る。
そんな俺を見て、猟師はいつも笑ってた。
俺は、またあの猟師に命を救われた。
物の怪となっても尚、あの男に助けられた。
生まれ変わったか、化けてしまったのか分からない。
でも、命ある限り、俺はこいつに恩を返したい。
そう思い続け、もう三年が経った。
俺は、この猟師と一緒に住んでいる。
この家で目覚めた時、言葉こそ初めは喋れなくなっていたが、こいつが色々教えてくれたから、少しずつ喋れる様になった。
「遅い!まだ⁉︎」
「はいはい。もうちょっとだって。」
そして、このザマだ。
ちゃんと喋れるようになったら、ありがとう。って言うつもりだったのに。
大事にされる日々が続く内に、俺はどんどん嫌な奴になっていった。
庭に立つ木を見上げると、枝に小鳥たちが止まり羽を休めている。
チチチ、チチチ、と美しい囀りが耳に聞こえる。
俺は、どんな声をしているのだろう。
どんな声をしていたんだろう。
身体を起こし、木へと近付いた。
小鳥達へ指を差し出すと、小さな翼を羽ばたかせ、一羽の鳥が指に止まった。
チチチ、と小鳥が首を傾げると、俺も同じ様に首を傾げた。
物の怪になっても、鳥達の言葉は分かる。
歌おう。巡り来る季節の歌を一緒に。
小鳥が指から飛び立ち俺の周りを旋回する。
両手を広げ、空へとかざし、小さく口を開いた。
吹けよ 吹けよ 春の風
野の花仰ぎ空へ舞え
桜を運び春を呼べ
日差しを受けて地よ光れ
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