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四季折の羽:パロディ【物の怪の願い】
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「ゴホ……ゴホっ…」
倒れたこいつをなんとか家まで連れ帰り、布団に寝かせ血で染まった着物を脱がせた。
咳は全然止まってなかった。むしろ酷くなった。
唇は紫色になってて、何度も体を横に倒し咳き込んでる。
「…っ……」
湯に浸した布を絞り、くっきりと浮き出る肋骨をそっと拭く。
熱は無いというのは本当だった。
でも、汗を掻いてるこいつの体はブルブルと震え、体温は冷たい土の如く冷え切っていた。
「大丈夫だよ……」
「…………」
「大丈夫だから……そんな顔するな…」
なんでこんな状態になっても、人間は大丈夫だと言って笑うのだろうか。
何も大丈夫なんかじゃないのに。血……いっぱい吐いてたのに……
「新……無理に働かなくていいよ。お前は俺の側に居てくれ。こんな風邪…すぐ治してまた美味いもんいっぱい食べさせてやるから。」
「……」
なんで、なんで俺は何も出来ないんだ……
「頼む……笑ってくれ…悲しそうな顔をさせたいんじゃないんだ。」
大きな手が、頬を撫でた。
弱く笑うこいつは、そう言うと静かに目を閉じた。
添えられた手が布団へと落ち、荒い息を漏らしながら、成海は眠った。
「……?………なる、み……」
ゼェゼェと、苦しそうに息をするこいつを見ると、涙が溢れて
何度も、何度もこいつの名前を呟き手を握った。
「嫌だ……いや、だ……」
俺がいつまでもお前に甘えてばかりいたから……我儘ばっか言ったから…
いつまでもお前に縋って、本当の事を隠し続けお前の側に居たから。
きっと神様が怒ったんだ……
「死ぬ、な……頼むから…頼む、から……」
ぽたりぽたりと涙が成海の頬に落ちる。
何故神様は、怒りの矛先を俺に向けなかったのだろうか。何故こいつを苦しめるのだろうか。
「ふっ……ゔ、…ゔぅ…」
物の怪が、人を愛してしまったから……
俺がこいつを愛してしまったから……
だからあんたは、俺の大切な人を奪おうとするのか…
「うぐっ、ふ、…ゔ、……」
手を握り、甲を頬に擦り寄せると、ピクリと成海の指が動いた。
そして、流れる涙を指先で優しく拭われた。
「……死なないよ。」
「……‼︎」
「…死なない。お前を置いて死んだりしない。」
「………っ…ぅ…」
目を開けたこいつは、そう言うとまた弱く笑った。
「ゔ、…ヒック、…ゔぅ、……」
神様……どうか俺からこの人を奪わないでくれ…
「新……泣くな…」
優しいこの人を……どうか…連れて行かないでくれ……
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