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四季折の羽:パロディ【歪な音】
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時はゆっくりと確実に過ぎ去って行った。
夜になると涼しい風が戸の隙間から家の中へと流れて、囲炉裏の火を仰いだ。
「ゴホ……ゴホ…っ…」
「馬鹿かよ。ゆっくり食えって言っただろが。」
少しの米と、山で採れた山菜を湯で炊き、雑炊状にしたものを成海の口元に運んでやると、こいつは口に入れた途端に咳き込み始めた。
背中をゆっくりと摩ってやると、成海は笑ってごめんごめん。と言ってきた。
「にしてもこれ雑炊か?…真っ黒じゃん…」
「っ‼︎う、うるさいっ‼︎料理とかした事無かったんだから仕方ねえだろ‼︎文句言うなら食うな‼︎」
クスクスと笑い始めたこいつを見ると、顔がカッと熱くなった。
ここ最近、やっと俺は料理を作り始める事が出来た。
でも、何度やっても何故か真っ黒くなっちまって。
こいつがいつも作ってくれた色鮮やかな食いもんには程遠い物ばかり出来上がってしまう。
「嘘だよ。おいしいよ。……ありがとう。」
「……っ…」
目を閉じて笑うこいつは、とても綺麗だった。
でも、こいつはまた嘘をついた。
こんな真っ黒い食べ物……美味しいはずないのに。
「食ったら……そこら辺に茶碗置いとけ。後で片付けるから。」
美味い飯もろくに食わせてやれねえ自分が、本当に情けねえ。
「あれ…お前はご飯食べたのか?」
立ち上がると、成海が後ろから声を掛けてくる。
飯はもう食べた。と一言言って、俺は別の部屋へと場所を移した。
パタン、と戸を閉めて、部屋の中央に置かれた古びた機織り機の前に座った。
数日前、あのお爺さんに機の織り方を教わった。
そしてこの家に似たような物があったから、急いで家に帰って来たら、ホコリ被ってたけど、あったのは機織り機だった。
きっと、成海のお袋さんが使ってた物だろうと思って、ホコリを丁寧に拭き取りお爺さんが教えてくれた様に羽を使って布生地を織り始めた。
「……っ…」
目を閉じて、背中に力を入れたら、バサリと消え去っていた翼が現れる。
翼は、消えてなんかなかった。
必要ないと思い込んでた日々が続いたから、あいつに本当の姿を知られるのが怖かったから、無意識の内に隠していただけだった。
この翼は今じゃ俺が物の怪である唯一の証。
「いっ……」
プツン、と翼から一つ羽を抜き取る。
懐かしい自分の白い羽。抜いた場所は少しジンジンと痛むが、なんてことない。
「……………」
トン、トン、カタン、カタン、ガタン
ゆっくりでかっこ悪い音が部屋に響く。
糸を左から右に通し、そして右から左へ通す。
糸と、俺の羽の繊維が織り込まれて行く。
トン、トン、カタン、カタン、
足を踏み替え、縦糸が交差してまた糸を左から右に通して行く。
「は、っ……は……いっ」
プツン、とまた一つ羽を抜き取る。
「はぁ…っ……は、…」
糸と糸の間に指を通すと、ピンと張った糸に指が触れ皮膚が切れる。
「…っ…」
トン、トン、トン……カタン、カタン、カタン
歪なその音だけが、あばら家に静かに響いた。
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