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四季折の羽:パロディ【涙】
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「こんな薄汚い物をこのわしに買えと言うのか?」
低く、冷たい声が響いた。
その後すぐに、ドカ、と台が蹴られた音。
あのお爺さんに頼んで、いつもお爺さんのお店の布生地を買ってくれる貴族の元へと来た。
「お願いします……どうか…少しだけでもいいんです。」
頭を深々と下げ、目の前に転がってきた自分の羽が織り込まれた生地を見ると、ぐっと唇を噛んでまた頭を下げた。
最初から上手く作れる訳なかったんだ。
出来上がった物は、店に並ぶ美しい生地には到底及ばない物だった。
でも、初めて最後まで織れたんだ。不恰好だけど、必死に織ったんだ。
「お願いします…お金が必要なんです…」
帰れと言われても、頭を下げ続けた。
少しでいい。少しだけでもいいから、この生地が売れれば薬が買える。
「消えろ。目障りだ。」
「…っ……」
だけど、どんなに頼んだって、やっぱり俺が作った物は売れなかった。
終いには、そんなもの雑巾以外使い道は無い。って言われた。
「…また…来ます…」
転がる生地を拾い上げ、最後にもう一度頭を下げて屋敷を出た。
「……雑巾…か」
全くその通りだ……こんな継ぎ接ぎの布切れ…売れる訳ないよな…
「…っ…ゔ…」
力一杯、作り上げた生地を握り締めると、涙が溢れて来る。
悔しい…。でもこれは俺が上手く作れなかったからだ。
精一杯作って、精一杯機を踏んでも、俺が作れる物は無価値なただの布切れなんだ。
「もっと……ちゃんと…」
綺麗に、一本一本丁寧に…もう一度作ろう…。
今度こそ買ってもらえるように。
羽を何枚使おうが、何枚引き抜こうが、指が裂けても、足が動かなくなっても、それでもいいから、ちゃんと買って貰える程美しい物を作ろう。
「は、…っ…は…」
都から出ると、全力で走る。
金属の刃に与えられた痛みを覚えてる左足をズルズルと引きずりながら、あいつが待つ家まで全力で走る。
帰ったら、料理ももっとちゃんと作ろう。
あいつ、汗いっぱい掻いてるだろうから、新しい着物に着替えさせてやって、体も拭いてやろう。
「は…っ…は、…へへ…」
あいつに、俺が作ったこの布生地見せたらどんな顔するかな?
下手くそ。って笑うかな?頑張ったな。って褒めてくれるかな?
「……ゔっ‼︎」
走っていると、足を滑らせ転んでしまった。
「へへ…っ…」
土の味が口いっぱいに広がって、地面に着いた拳をぎゅっと握り締めた。
「…ゔっ、ぅ……」
早く、早く……立て…立って走れ……泣いてる暇なんか無いんだ……立ち止まってる暇なんか無いんだ
「ぁ"……ゔっ…」
時間が無いんだ…早く薬を買って、あいつに飲ませてやらねえと、このままじゃ、あいつが……あいつが…
「あ"あ"…あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"……」
成海が、死んでしまう
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