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会長と日野 猫カフェデート その5
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「ま、またのご来店をお待ちしております」
ギクシャクとした挨拶と引きつっちゅう顔を向けられカフェを出た。
結局あの後誤魔化すのにだいぶ苦労したけんど、店員さんのあの顔を見るとどうやら誤魔化し切れてなかったみたい。
まぁ、墨入れちゅう奴見たらそらびっくりするか。
早く俺らに店出てほしかったか知らんけんど、店の看板メニューであるホットケーキと紅茶を勧められ、食べ終わる頃には「早く帰ってくれ」と言いゆうような目が向けられ渋々店を出ることに。
「はぁ〜、楽しかった」
隣でいっちゃんは大きく背伸びをした。
手には猫専用のクッキーが入った紙袋。リっちゃんへのお土産らしい。
「いっちゃん、ごめんな」
「え?」
あんなに楽しんじょったのに、俺が墨見られたき後半はずっと店内不穏な雰囲気やったし。
それにいっちゃんみたいな人と俺がどうして一緒におるのか、好奇な目を向けられる事になってしまった。
ほんまに、楽しんでもらえたがやろうか。
「日野」
「えっ」
「もう一つ、行きたいところあるんだけどいい?」
ニコリと笑ういっちゃんが俺の手を引く。
暗くなる街の景色の中で、金色の髪が目の前でゆらゆらと揺れた。
「今度は旅行行きたいね」
「え、お、おん」
「観光地を巡って、お土産も沢山見て回って、歩き疲れたら旅館に戻って一緒に温泉でも入ろうよ」
高層ビルのエントランスに到着する。
手を引かれたまま、エレベーターへと乗り込んだ。
「や、やっぱ今日鎌倉行きたかったよな?」
「…違うよ。楽しみが後になっただけじゃないか。僕は君とまた次がある事が嬉しいんだよ」
「……?」
「って…馬鹿にはわからないかな」
「ば、馬鹿とはなんぞっ」
「あ、ほら着いた」
ポーンと綺麗な音が鳴ると同時にエレベーターが開く。
「来て」と言われいっちゃんの後ろについて歩くと、そこは展望台やった。
「わ…」
目の前に広がる景色に思わず息を飲む。
「少し時間は早いけど、これからもっと綺麗な景色になるよ」
沈んで行く太陽が街を赤色に染める。
「す、すごい‼︎」
どこまでも続く街の景色と散らばる無数の光。
「めっちゃ綺麗‼︎」
太陽がおらんなると、空はたちまち暗くなり、地上の光がキラキラと星屑のように輝き始めた。
夜空と反転したみたいで、なんか鳥肌がゾワリと立つ。
今まで都会がこんなに綺麗な場所やなんて思った事なかったけんど、言葉で言い表すなら「綺麗」の文字しか出てこん。
「いっちゃん‼︎ 見てちや‼︎」
「見てるよ…あと声大きい」
「凄いなあ‼︎ あそこの大通りなんか天の川みたいや‼︎」
前にいっちゃんと地元で見た夜空みたいに、キラキラ光ってそれを隣で一緒に見れるという事がたまらんくらいに俺を喜ばせる。
「いっちゃん、ありがとう‼︎」
この瞬間を、一緒に見れる喜び。
「大袈裟だな…」
恥ずかしがりながらも、隣に来てくれて同じ景色を眺める。
「今度また行こうや」
「どこに?」
「猫カフェ‼︎」
どこでもいい。どこまででも俺は行きたい。
もっと色んなものをいっちゃんと一緒に。
「…うん」
いっぱい思い出を作ろう。
いっぱい思い出を作りたい。
「いっちゃん大好きっ」
胸が温かくて、ドキドキして、抱き締めたくなるのはいっちゃんだけ。
「……人に聞かれてたらどうするのさ」
「そんなんいいもん‼︎」
「はぁ…もう……」
「じゃ、じゃあ手ぇ繋ぎたい‼︎ チューしたい‼︎」
「キスはダメ」
「ええ〜⁉︎ こんなえいとこでチューせんでどうするがよ‼︎」
「君は場所を考えないからいけないんだっ‼︎」
「そんな事言わんと〜ほら〜」
「あっ、ちょ日野‼︎」
綺麗で繊細で、男前で、可愛くて仕方がない俺の恋人。
「もう……一回だけだよ…?」
「ふふんっ、うん‼︎」
いっちゃんの隣が、俺の特等席。
【会長と日野 猫カフェデート(?)/終】
お読みになって頂きありがとうございました。
これは展望台がメインじゃ…(殴)
次回もよろしくお願いします。
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