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傷と噛み跡/オメガバースパロディ【成海×新】3
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点呼後のチャイムが鳴り響くある日の朝。あの悪夢のような日から半年が経ち、俺は高校生になった。
あの一件があり、俺は喧嘩から足を洗うことを決意した。人が多く集まる場所に自ら身を置くことはもうやめた。
あの時、襲われそうになった寸前で、騒ぎを聞き付けた警官が助けに入ってくれたという。その時抑制剤を打たれ、俺はなんとか最悪の事態を逃れる事が出来た。
秋人とは…あれから会っていない。学校にも顔を出さないままで、結局何も話が出来ないまま卒業してしまった。
大方、あいつの事だから罪悪感から俺に顔向け出来ないと思っているんだろうけど…悪いのは俺だ。
自分の立場をちゃんと理解する事が出来てなかった。
もう元の関係にはきっと戻れない。秋人は自分を許さないだろうし、俺も……アルファに会うのが怖い。
あんなに意気がっていたくせに…ほんと情けない。
発情抑制剤も、首輪も、今じゃ身に付けていないと安心が出来ない。
けれど、それでも俺は…オメガという自分の運命に抗おうとしてる。
次は同じような失敗はしない。それさえ守れば、今度こそ……
なんて、また夢を見ようとするんだ。
「渋谷ー、テストの結果出てるぞ」
「えっ」
教室に戻ろうとすると、ダチが向かいから歩いて来てポンッと肩を叩かれる。
「お前また一位かよー。ほんっとその見た目で腹立つわ」
「おいまだ結果見てねぇのにバラすなよ!」
高校では、相変わらずオメガを見る目は厳しかったが友達は出来た。
不良だった事を隠し、一般生徒として…少しでも同じ扱いをしてもらえるよう振る舞っている。
頭は悪くない方だったから、勉強すれば成績は上がっていったし、特待生の枠に入れる程になった。
「うひょー、お前あと二問合ってたらオール満点じゃねえか」
「ふん、まぁな」
オメガである生徒は、定期的に訪れる発情期の期間は学校に申請書を出し七日間自宅で発情期が過ぎるのを待つという対策を取る。
俺は今月はまだ来てないから、そろそろ申請書を出す準備をしておいた方が良さそうだ。
「つか、やっぱ二年のアルファ様は優秀揃いだな」
廊下のボードに貼られていた全学年のテスト結果。ダチが指差したものは、一つ上の学年の特進コースの張り紙だ。
「…アルファは嫌いだ」
上位に挙げられている名はどれもアルファの人間。
「まぁまぁ、んな事みんな思ってるって」
なら、この差はなんだ。
「一年のトップ、またあのオメガらしいぜ」
「うっそ信じらんない…」
「どうせ先生に媚び売って不正行為でもしたんでしょ?」
「先生の番になりますぅーつって」
「あはははっ、なにそれウケる」
オメガの風当たりはどこに行っても同じだ。
「やっぱ流石よねっ、私会長になら使われてもいいっ」
「ちょっとぉ、私達なんか相手にしてもらえないわよ」
「オメガになるのはごめんだけど、あの二人になら番われてもいいよね」
「はぁーん…あの甘美なフェロモンを直に味わいたいぃ」
死ね。くそベータどもは黙ってろ。
どうせ相手にされないどころがそこら辺の犬のクソ以下に見られてらぁ。
「けっ」
つか、それは俺も同じ事…っていやいや。俺は他の奴らとは違う。
少なくとも、アルファを特別視するくそベータ共とは違う。
この生徒会のアルファ様って奴らも、そのうち俺が負かしてやる。俺が生徒会長の座をぶん取って…あわよくば…
「きゃっ!! か、会長っ」
隣で女が声を荒げると共に、ブワリと甘い香りが全身を駆け巡った。
「みんな、確認が済んだら自分の教室に戻ってね。もうすぐでチャイムも鳴るよ?」
ビリビリと頭の中が痺れ、心臓が破裂してしまいそうな程に煩く跳ね上がる。
「会長っ、今回も学年トップおめでとうございます」
これは、なんだ………
「ありがとう。でも別に大した事じゃないよ」
引き寄せられる強い香り。
「あ、ねぇ君」
「っ…!!」
「君、一年トップの渋谷くんだよね?」
きっと、振り向いたらお終いだ。
「ちょうど良かった。君に話があるんだけど」
きっと振り向けば、俺はもうそこから逃げられなくなる。
「生徒会に入らない? あ、急にごめんね…僕は月島樹。こんなだけど一応この学園の生徒会長を勤めさせてもらってます」
ダメだと何度も頭で思うのに、磁石の様に体が引っ張られる。
「で、こっちは副会長の――…」
振り向けば、そこに立つ一人のアルファが俺と同じ表情をして立っていた。
真っ黒な髪と、真っ黒な目。
ただ呆然と立ち尽くす俺とそのアルファは、きっと同じ事を考えた。
「ほら、成海も自己紹介して」
―――……俺は、こいつの番になる。
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