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第六話 「人を守るその心 1」
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「.........氷室...さん」
刹那の口から小さく言葉がこぼれる。
「よく名前覚えてくれたね、嬉しいよ」
「俺は自分の名前を名乗った覚えなんてねえですよ?」
刹那は暗器を持っている両手に力を入れ、いつ攻撃されても反応できるよう神経を集中させる。
「そうだったっけ?...でも、君のことは少し知ってるんだよね。何故かわからないけど」
「......」
「なんだか初めから頭の中に情報が入っていて不気味だったんだけどね、また会えて嬉しいな」
氷室さんはすこし顔を傾けて、薄く刹那に笑いかける。
そして手に持っている包丁のような形の刃物を前に出して、構える。
そして、その次の瞬間一気に鬼の方から間合いを詰めてきた。
「っ!!」
刹那は二本の暗器をその刃物に当て、自身の刃の側面に当たるようにし、滑らせて回避する。
それから間を開けずに右肩目掛けて、左手に持っている暗器を横に降るが、相手は予想していたのか軽々と避けられる。
無意識に刹那から舌打ちが出た。
「怖い怖い...君ってそんな子だったっけ」
「そんなことはどうでもいいんでい」
短く息をはいて相手じっと観察する。
すると、氷室さんの首筋に黒く不気味な時計模様を見つけた。
「氷室さん...それって...」
まさかこんな所で見ることになるとは思っていなかった代物を見てしまった刹那は、足を後ろに引いてしまう。
その隙を狙って、鬼は刹那の顔に入れてきた。
間一髪で避けたが、完全とは言えず、頬に赤い線が入り、鮮血が刹那の顔を汚した。
「氷室さん!その首筋の模様...誰につけられたんですかい」
刹那がそう言うと、氷室さんは首筋を摩ってなんのことか分からないというような様子でこっちを見た。
刹那はあれを一度見たことがある。
ということは、もしかしたらこの近くに能力者がいるかもしれない。
そんな事を考えている間にも、鬼は次から次へと刹那を責め立てるが、なにしろ刹那よりも隙が多い。
しかし、ひとつ分かったのは、氷室さんは能力者に利用されているという事だ。
「氷室さん...目を覚ましてくだせえ!」
もちろんこんな事を言っても意味が無いことは分かっている。
きっとこの声は本当の氷室さんには届いていない。
それなら、もう方法はひとつしか残っていない。
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