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油断大敵
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バタフライをする利用者の横を泳ぐとき、足も使っていないとその波に少し流され、息継ぎのタイミングがそれとかち合うと俺みたいなド素人は少しばかし水を飲んでしまう。それをどうにか堪えて泳ぎきる。コースの端でなんとも表現しずらい痛みに耐えて息を整える。
…失敗した。そう思っても隣のコースは止まることなく泳ぎ続けて、息が整う頃には既に向こう側だ。
キャップとゴーグルであの彼だと分かる。荒々しく見えるバタフライでも彼の姿は素人目にもフォームが綺麗で、水面から出てくる顔を見ていると…少しだけ興奮を覚える。こんな時、自分の水着の布の面積に後悔する。水中とは言えやはりシャレにならない。
彼が戻ってくる前に俺は息を吸い込み潜り壁を蹴った。
ターンは苦手だ。別に選手だとかタイムをとってるわけじゃない。ゆっくり泳ぐ俺がターンして泳ぐ意味は、同レーンに休憩している者が居る場合のスマートな追い抜きだろうか。変な気を遣わなくて済む。でもやはり慣れないことはあとあとに響いて、結局追い付かれ追い越される場合が多い。俺は足を使わないから仕方がない。…負け惜しみではない、決して。
何本しただろうか。距離は……750mちょっと。
時計を見上げるついでに、監視員もチェック。赤のポロシャツに黒のハーフパンツから覗く無駄毛処理された筋肉質の日焼けした足。プールを見渡すその表情はなんとも色気があって…夜の監視員は男が多くてたまらない。
「キミ、あーいうのがタイプ?」
肩がズシリと重くなったと思ったら、隣のコースのあの彼だった。俺の肩に片手をのせ肩口から覗き込むように囁かれた。
声を聞くのも初めてなら休憩以外で隣に立たれるのも多分初めてな彼から、肩をぐぐっと押された。
「……何がですか?」
その手をほどこうと肩を下げるが、向こうはますます体重をかけてくる。
「だってキミ、僕と同業者だろ?」
「は?」
「……テント張ってるからさ。」
一瞬で沈んだ俺は、言われてようやく気がついた。
さっきまで半勃ちだったことをすっかり忘れていた。水中でどうにかテントを直し…とは言え、そうすぐには直らないのだが…水面に顔を出した。
「バタフライだからって、油断してた?違う泳ぎ方もするし休憩だってするからね。気を付けな。」
再びタレ目をゴーグルで覆うと、スゥーっと息を吸い込み泳ぎ出した。彼はクロールであっという間に泳いでいってしまった。
肩の力が抜けたのも束の間、彼は早くもターンしている。もう一度テントを整えるとユルいクロールでその場から逃げるように泳ぎ出た。
泳ぎながら、ふと会話の違和感を思い出した。
『だってキミ、僕と同業者だろ?』
同業者ってもしかして、ゲイってことなのか?だとしたら彼もゲイなのか。
身近に存在していなかった同業者にこんな所で逢おうとは。
とりあえず、水着を新調しよう。
そう思いながら隣のレーンの彼と休憩が被らないようにトータル1000m泳いで、プールから出て行こうと…股間の熱が収まるように…俺は無心で水をかいた。
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