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5ー05
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ザクロが目の前で崩れ落ちていく。
真っ白になる頭。
乾ききった唇。
湧き上がる恐怖。
居ても経ってもいられなかった俺は言うことの聞かない体を引きずり、必死にザクロの元に這い寄る。
声が震えて…上手く出てこない。
「ざ、くろ……ザクロッ!!」
「章、人……大丈……夫?」
「何、言ってるんだ!俺より、お前の方が…!」
「はは…大丈夫、ちょっと休めば…治る、から」
嘘だ。
嘘だ。
血で染まっていく地面。
触れる体はどんどん冷たくなっていく。
お前の体温が消えていく。
嫌だ。
嫌だ。
お前が死ぬなんて、絶対に嫌だ…ッ。
「アキ殿!ザクロ殿!」
「何という事だ…!ハル!彼らを急いで……ーー!」
駆け寄ってきたカジとハルの言葉がまるで耳に入ってこない。
俺の事は良いから早く。
早くザクロを助けてくれ。
薄れていく意識。
歪んでいく視界。
もう、声すら出てくれない。
「…章人……泣か、ないで…」
「………ッ!」
それなのにお前は、俺に笑いかける。
俺の手を握って…大丈夫だと笑う。
どうしてお前は…こんな時まで俺の事ばかりなんだ。
激しい痛みと共に再び意識が遠退く。
…駄目だ、遠退くな。
俺はまだ、コイツの。
ザクロの…側に……。
消えていく意識の中…俺はただ、ザクロの無事を祈る事しか出来なかった。
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