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8ー04
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「も、もう少し見やすいのが良いな…」
「じゃあ、章人は何が見たい?」
「え?俺は………」
ザッと見たとき好みのヤツは無かった気がする。
折角見に来てるんだから、どうせなら普段見ないような話が良いな。
改めてラインナップを端から確認して、ある映画が目に止まった。
たまには…こういうのも良いかもしれない。
「……これ」
「『おバカなにゃんこルーシィ』?」
「動物のハートフルコメディか。へぇ…アキヒト、こういうのが好きだったのか」
「いや、広告の猫が……可愛かったから、癒されるかと思って」
可愛いって単語は意味もなく照れ臭くなってしまうからあまり言いたくはないが、コイツらもしっかり理由言ってたし…ちゃんと俺も言わないと。
そう思ってぎこちなく視線を下げて告げると、何故かザクロと千歳が目を瞬いていた。
あれ、俺何か変な事言ったか?
「…決まったな」
「何今の顔…めっちゃくちゃ可愛いんだけど!オレが癒された!寧ろたぎった!ねえキスして良い?キスしよう!」
「何ですぐそうなる!」
抱き付こうとしてくるザクロを全力で阻止していると、千歳が二人分のチケットを手早く購入してきた。
それにザクロは一気に眉をひそめる。
「お前、また性懲りもなくオレ達の邪魔を!」
「ちげえよバカ。ほら、やるよ」
「え?千歳の分は…」
「俺様は単純な話は嫌いなんだ。他の適当なヤツにしとく」
予想していなかった流れに軽く戸惑いながらも、素直に千歳へ感謝を告げた。
「そうか…わざわざありがとな。あ、チケット代出すからちょっと待ってくれ」
「いや、いい」
「え?」
驚いて見上げれば、千歳はニヤリと微笑む。
「代わりに、映画終わったらメシくらい付き合えよ。そこのアホ毛も一緒で良いから」
「章人はオレとデートしてるんですけどー?!というかアホ毛言うな!」
ギリギリと歯を食いしばるザクロを宥めつつ、俺は千歳に視線を移す。
「終わる頃にはお腹すきそうだし、ご飯位なら良いんじゃないか?」
「えーーー」
「それじゃあ終わったらフロアで」
そして千歳は俺達に軽く手を掲げ、背を向け離れていく。
その後ろ姿を見送った後、ザクロに振り返った。
「勝手に決めてごめんな……ん?」
するとザクロは何故か真剣な表情で俯き、口元に手を当て何かを呟いた。
「アイツ、一体何のつもりで…」
「ザクロ?」
独り言のように呟くザクロの言葉が聞き取れず首を傾げると、俺の視線に気づいたコイツは何事も無かったように笑った。
「あ、ごめん考え事してた。それじゃあ中入ろうか。先に飲み物とか買ってく?」
「そ、そうだな」
微かな違和感を覚えつつも…問い質す気までは起きなかった俺は、コイツの背中を眺めながら後に続いて足を進めた。
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