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8ー06
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「いやー面白かったね!」
映画を見終え、ザクロは元気いっぱいに背筋を伸ばしていた。
それを見つめながら俺は自然と顔の筋肉が緩む。
「そうだな、ルーシィに癒されたよ」
「…まぁオレは、一生懸命見る君に癒されたかな」
「え?」
「オレが見つめても全然気付かないし、泣きそうな顔とか最高に可愛くてもう大変だった」
「っ!!!」
まさか泣きかけていたのに気付かれていたとは。
羞恥心で一気に顔が熱くなり、つい声を荒げてしまう。
「おっ…俺じゃなくて映画を見ろよ!」
「勿論、ちゃんと見てたよ。どっちも可愛いかった!」
「…っ」
あんまりにも悪気なしに言われ、最早何も言えず俯く事しか出来なかった。
そして会場を出た俺達は、フロアで千歳の姿を探して辺りを見渡す。
向こうはまだ終わっていないようだ。
「別にアイツの事なんて待たなくて良いんじゃなーい?」
「一度約束したんだ。破ったら失礼だろ?」
「…君ってば本当に真面目。あー折角のデートだったのになー」
それは…本当に悪いなと思ってる。
けどアイツにチケット代を出された以上、タダで貰うわけにはいかないからな。
気怠そうに近場の椅子に座るザクロを横目に、俺は表情を曇らせる。
「ごめんな。…今度は、ちゃんと二人でまた出掛けよう」
そういえばザクロは目を瞬き、嬉しいそうに微笑んでくれた。
「うん、そうだね。ふふ…ドコが良いかなー」
楽しそうに悩むコイツを見て和んでいると、突然尿意がきた。
さっき水分を取ったから当然か。
「ザクロ、トイレ行ってくる。千歳も来るだろうから此処から動くなよ。直ぐ戻るから」
「おっけー。行ってらっしゃーい」
明るく見送られ、俺は映画館内のトイレに足を運んだ。
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