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その根拠
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布巾片手に戻った本庄は濡れている床を拭き始めた。四つん這いになった拍子にTシャツの裾がめくれて腰がチラリと見える。
陽を浴びた事の無いような透けるような肌を見ると運動なんてしなさそうに思えたが、きちんと鍛えられている締まった腰回りだった。
確か本庄は俺よりも3、4cmくらいは背が低かったはずなのに、こうして改めて見ると大きく身長差を感じさせない。
目の前の床を吹き上げる掌は俺に比べ多分一回りはでかい。骨格がいいのだろう。羨ましいと同時に悔しく思う。
鍛え上げればきっと俺を凌駕する肉体になるだろう。
大きな掌の持ち主が不意に疑問の声を上げた。訝しげな顔が俺を見ている。悔しい、と声に出していたのだろうか。
「いや、手のひらがでけぇなと思ってな」
すると本庄はそうだろうか、と自分の掌をしげしげと見つめた。その手を取って自分の掌と合わせてみる。
「ああ、ほらやっぱりでけぇ」
「……。」
「な?」
同意を求めると、まるで火傷をしたような仕草で手を引っ込められた。大事そうに俺の触れた右手を抱えている本庄は耳が紅く変色していた。
ああ、どうしたってこいつはさっきからイマドキ女でもしないような反応ばかりするんだ。
経験のない沈黙は俺を困惑させる。俺は痒くもない頭を掻いた。
「おまえって俺のことなんで、好きに、なった?」
俺は自分が好かれる人間だなんて思ってはいない。それどころか生憎の目つき故に、周りからの評価は悪いはずだ。今は先の部大会のせいで多少注目を浴びているがそれもすぐになりを潜めるだろう。
好きになられる理由がわからない。
「わからないんだ」
「わからねぇって」
「だって間宮のことよく知らない」
「そりゃあ、な」
俺だってこいつの事を知ったのは視線に気づいたからなのだ。お互い知らなくて当然だろう。
だからこそ、何故と思わずにはいられなかった。そんな俺の疑問を知っての事か、本庄は続けて言った。
「けど、自分に似ていると思ったんだ」
「似てる?」
「間宮はボクシングやっている時間しか面白くないと思ってる」
「………。」
「俺は音楽以外面白くない」
「それが似てる?」
子供のように本庄は頷いた。
「俺はライブの時がいちばん興奮する。間宮だって………」
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