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不敵
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「はっ⁇」
「間宮は、人を殴ってる時が1番興奮する。そうでしょう」
本庄は語尾の発音を上げなかった。つまりはクエスチョンでなく断言したのだ。随分と自信の溢れる顔でこちらを見ている。
俺はというと、間抜けなことに言葉に詰まっていたのだ。
いくらでも言い繕うことなんて出来た。そんな変態染みたことを、とか。そりゃあアドレナリンが最高潮だからな、とか。
だけど言葉が出なかったのは、俺自身否定出来るだけの自信がなかったからだ。
「俺たちが大切にするものはもう決まってる。だから、それ以外のものが目に入らないし、たとえそれ以外のものがどうなっても気にならない。間宮もそうだってすぐにわかった」
「……随分な自信だな」
「でも、否定しない」
「……。」
こいつは本当に厄介なやつだ。
他人の心に戸惑いもなく入ってくる奴は、田中みたいな途轍もない阿呆か、それとも弱点なんて持ってない超人か。
本庄は後者だろうか。
いや、弱点ならあった。俺にとってはボクシングで、本庄にとっては音楽だろう。もうすでに弱点を晒しているようなものだ。つまりはもう恐れるものなどないということか。
と、いうことはやはり後者なのだ。
ソファに寄りかかってため息と共に上を向く。蛍光灯が眩しく、目を閉じて腕でガードした。
思い返せば今日一日間宮に振り回されっぱなしだった。いや、この半年くらいずっとか。
どうしてこうなった。
田中が哀れでライブに行ったからだろうか。そもそも俺は間宮に言わなきゃいけない事があったんじゃないだろうか。
「……焼肉定食」
「え?」
そうだ!あいつのことを言うんだった。しかし、焼肉定食の名前を思い出せない。
「おまえ、俺のこと好きだって言ったが、焼肉定食のことはどうなんだ?」
「鯖味噌定食のほうが好みだけど……。」
「そうか」
腕の隙間からちらりと伺うと、怪訝な顔をして俺をみている。言い知れぬ苛立ちが俺を襲う。
くそが。名前が出てこねぇ。
再び本庄に目線を合わせる。
「おまえ、俺以外に好きな奴いるんだろう」
「間宮だけだよ」
「そんなはずがないだろう。あー、そのー、太った女が好みのはずだ」
本庄の怪訝な顔がより一層増して、眉間に深い溝が出来た。
この反応はもしかしたら焼肉定食を好きだとかはあいつらの勘違いなのだろうか。
「なんだか良く分からないけど、俺が好きなのは間宮で、間宮以外の誰かに興奮なんてしないし、俺が抱きたいのは間宮だけだよ」
不敵に笑う顔は王子というより、獣のようだった。
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